対話しない公式アカウントは必要か:新潟県のSNS運用指針作成から


読売新聞によると、新潟県がSNS運用指針を作成するという。

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新潟県、SNS運用指針作成へ…「炎上」防ぐ : ニュース : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

新潟県は、部局や県職員がインターネット上のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)を使用する際の運用指針を作成する。組織として発信内容に責任を持つのが狙いで、今夏中にも庁内に周知徹底する。

 指針には、▽発信は庁内の部や課が主体となって行う▽発信内容は部や課で決める――ことなどが盛り込まれる予定で、県職員の勝手な運用や不用意な発信によってネット上のツイッターやフェイスブック(FB)などに批判が殺到する「炎上」や、県のイメージ低下などを未然に防ぐ。

はっきりとは書いていないが、文脈からすると、いわゆる「公式アカウント」「公式Facebookページ」の運用に関することのようだ。復興庁職員のTweet問題から、個人の発信を規制するという話になっていないのであれば、ひとまずは安心。しかし炎上を防ぐという観点からは、個人アカウントの動きも気になるだろう。

さて「公式」についてだが、「県職員の勝手な運用や不用意な発信」を防ぐため、「発信は庁内の部や課が主体となって行う」「発信内容は部や課で決める」といった指針を定めるようだ。たしかに担当者が1人で、本人の独断に全てをゆだねてしまうのはリスクが有るとは思う。ただ、それもまた、実効性があるかどうかはなんともいえない。というのも、情熱を持って、同じテンションでソーシャルメディアに取り組める人が、それぞれの部署に複数もいるとは、考えにくいからだ。もしそういう人が複数名用意できるのであれば、もっと利用が進んでいるような気もする。

ともあれ、「発信内容は部や課で決める」というのは、書き込む内容をすべて、部や課の単位で事前承認するということを意味するのだろうか?おそらく報道発表のようなものは、こうした形になっているのかもしれないが、TwitterやFacebookのようなメディアでもそれをやるのだろうか。やれないことはないだろうが、そこまで規制してしまうと、そもそもやる意味が薄れるように思う。過去に外務省のアカウントが、フィンランド大使館とうまく対話ができず、実はいちいち上司の許可が必要だったという話題があった。

朝日新聞デジタル:つぶやき交流、質問ごとに上司の許可 外務省、2問で完 – 政治

対話できないのであれば、通常のウェブページとあまり違いはないので、無理にソーシャルメディアを活用する必要はないのだが、対話するのであれば、いちいち「部や課で決め」てはいられない。ここに公式ソーシャルメディアの難しさがあるとは思うのだが、この問題を組織としてクリアする気がなく、「すべて組織的に決定してから発言する」というのでは、うまく運用することは難しいだろう。対話をしない公式アカウントは、よっぽどありがたい情報を提供してくれるのでなければ、決して支持されないと思う。現場に任せつつ統制も怠らない、という、絶妙なバランスを、きちんと考えるべきだ。Facebookページであれば、いちいち全部のコメントにはこたえないが、よいコメントにはいいねをおすとか、簡単なものには担当者が「電話応対」と同じようにどんどん答えていくというぐらいは、必要になるだろう。もちろん難しい問題については、組織的に対応できるようにしたほうがよい(組織内の調整をメールでやるのでは間に合わないので、即時性のあるメッセージングサービスやチャットは必要になるように思うが、、、ダメなんだろうなあ)。

おそらくこれは記者が想像して補完したのだと思うが、以下の様な記述もある。

ただ、今年5月、県村上地域振興局が山形県境の山「日本国にほんこく」(555メートル)の登頂者に記念の「日本国征服証明書」の発行を企画したところ、ネット上で「不適切だ」などと批判が広まり、同局が「登頂証明書」に急きょ名称変更するなど、ネット上では思わぬ批判が一気に広がる恐れがある。

この件を、村上地域振興局がソーシャルメディアで拡散したのかどうかは知らないが、これは「不用意な発言」の問題ではなく、「日本国征服証明書」の発行するという「企画」に対して向けられた批判だろう。こうした批判をうけないために、「発信内容は部や課で決める」というのであれば、批判されそうなことをソーシャルメディアでは発表しない、ということになってしまう。実際にはこの件は、ネット上ならばそんなに反対は強まらないような気がするので、ネットに拡散したほうがよかったのかもしれない。電話で批判するような人が出てきても、Facebookだとまた違う反応があったりして、担当者はむしろ励まされることもあるだろう。

個人的には、ソーシャルメディアの運用をコントロールするといっても限界があると思っている。最終的には組織の中で出来る限り信頼出来る対話力のある人を配置し、ある程度のチェックが働くようにした上で、運用していくよりほかないだろう。

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