朝日新聞編集委員の平和博さんの新刊。『月間ジャーナリスト』という雑誌で連載された「新人記者のためのネット取材講座」の現行が元になっていて、いわば新人記者に向けたネット利用指南なのだが、「デジタルネイティブ」ではあるものの「発信者」としては未熟な大学生、あるいは一般のネットユーザに対しても、非常に示唆のある内容となっている。
本書では、梅棹忠夫『知的生産の技術』を始めとする「情報の扱い方」についての過去の著作を例にとりつつ、本格的なネット時代でにあわせてこれらノウハウにもアップデートや新しい基礎知識が必要になってきたとし、その新たな能力を総称して「ネット力」と称している。その上で「ネット力」を、「収集」「保存」「確認」「編集」「発信」「共有」「安全」の7項目に分けて説明している。
普段から、ソーシャルメディアを含むネットを使いこんでいるユーザであれば、さほど新しい情報は出てこないのだが、大学で教えている立場からすると、整理の仕方は非常に参考になる。その中でも、Wikipediaを含む「ネット情報」の確かめ方に関する「確認」の項目は、学生はもちろんのこと、普段何気なく使っている大人にも役立つノウハウである。さらに、情報のまとめ方(編集)には、新人新聞記者を意識して、ウェブと紙の違いを踏まえた文章の書き方が書かれている。
全体的には、コグレさん・するぷさんの「プロブロガー」とは異なり、どちらかというと、藤代さん「発信力」に近い内容かもしれない。情報を収集・発信・共有といった全プロセスについて、網羅的にカバーしているのは、この平さんの本だろうか。いずれにしても、ソーシャルメディアやブログ、いやもう少し広く、メディアの世界に関心をもつ大学生は、この三冊、是非読んでみるべきだろう。
[…] 敬和学園大学の一戸信哉さんさんには、「ICHINOHE Blog」でご紹介いただいた。 面白かったし、一気に読めました。 […]