原武史『震災と鉄道』 (朝日新書)


今日、日帰りで東京まで行ってきた道すがら、読み終えた本。アマゾンのレビューは今のところ、なかなか厳しい。

日本政治思想史が専門の原先生による、鉄道の話。もちろんかなりの「鉄分」を感じさせるのだが、それだけではない。被災した三陸地域の鉄道が、いまどのような扱いを受けているか。これまでどのような扱いを受けて、利用率の低い路線になってしまったか。
一方新幹線のネットワークを広げる中で、日本が失ったものは何なのか。

「非鉄系」の自分は、JR東日本の営利追求を批判する姿勢を、当初割り引いて読んで始めたが、次第に「鉄道を通して見えるもの」がわかるような気がしてきた。山田線、三陸鉄道、気仙沼線などに乗ってみるのはもちろん、北海道の廃線跡も、ぜひ訪れてみたいと思った。情報系の研究者や企業人には、鉄系の人が非常に多く、自分には提供できる話題がなかったのだが、この本をネタに共通の話題ができそうだ。

アマゾンのレビュアーたちが述べるとおり、公共的な政策としてどこまで現実的なものになりうるのかは、よく検討が必要だろう。しかしこの「鉄系」の発想には、拡大路線が望めない日本が、効率化のために地方を切り捨てるのではなく、地方も含めて活性化させ、身の丈にあった幸福を追求するためのヒントが、隠れているように思った。
震災を切り口としながら、基本インフラとしての鉄道をどのように支えていくべきなのか、非常に示唆に富む一冊。

「鉄学」概論―車窓から眺める日本近現代史 (新潮文庫)

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