今日は3限が終わったあと、新発田市内の新発田学研究センターで行われたイベントへ。新発田で写真のアーカイブプロジェクトを始めようというプロジェクトのイベントで、写真家で敬和学園大学非常勤講師でもある、吉原悠博先生と、学科の同僚である神田より子先生による対談が行われた。ちょうどよいタイミングで、朝日にもこのプロジェクトについての記事がでたところ。
Source: i-love.shibata.jp via Shinya on Pinterest
敬和学園大学の新発田学研究センターは9日、街並みや風景を撮影した古い写真と、当時の思い出といった人々の記憶を一緒に保存する事業を始める。「新発田アーカイブス」と題されたプロジェクトを率いる神田より子教授は「古いモノクロ写真は、当時の空気を鮮やかに再現してくれる。世代を超えて記憶を共有することにつなげたい」と話している。
この事業では、まず新発田市内の商店や寺などから古い写真を借りて、パソコンに画像を入力する。週1回、センターで写真の提供者や撮影した人から思い出を語ってもらう会を開き、学生が話を聞き取って、パソコンに記録。データを蓄積し、検索できるようにする構想が描かれている。
新発田アーカイブス発足 | 写真の町・シバタ 〜写真には人と人を繋げる力がある〜
神田先生から協力要請をいただいたので、どこまでお力になれるかわからないが、とりあえずプロジェクトの様子をうかがおうと、今日出席してみた次第。おおよその様子はわかった。
吉原先生はご自身が経営されている吉原写真館が所蔵しているたくさんの写真があり、これをすでにウェブでも公開されており、また、音とスライドショーを組み合わせた作品も作られている。以前にも拝見したことがあるのだが、今回も少しバージョンアップした作品を見せていただいた。
今回のプロジェクトはこれを拡張し、町の人々が持っている写真をアーカイブ化し、できればウェブでも公開していこうというもの。会場には、すでに始まっているアーカイブ作業に協力し、スキャン作業を行なっている方や、たくさんの貴重な写真をお持ちになっている方などが集まり、活発に議論がなされた。基本的には、メタ情報を入れて、情報を公開していくことにより、新発田の記録、記憶を掘り起こし、人々の関心を高めていこうというのが、吉原先生の方向性。これに対して、義他のメンバーからは、基本的に前向きなコメントがあった。吉原先生の完成度の高い、完結した作品の世界にとどまらず、不完全な断片を組み合わせたデータベースを、どこまで社会的に有用な共有財産として組み立てていくか、この点が大事になりそうだ。
最終的に、任意団体としての作業ではなく、敬和学園大学がもっと全面に出て、より永続的なアーカイブを責任をもって管理するという立場に立ってほしいし、その方が写真を提供しやすいというコメントもいただいた。これはとてもありがたいご意見であった。
アーカイブの目的としては、コミュニティ内部での記憶の共有がまず第一になるが、これを新発田の外側にどのように発信するかも大事な目的の一つになる。前者についてはまず、プロジェクトメンバーが協力してタグ付けをしていくという作業をし、場合によっては街の人達により広く集まってもらって、「タグ付大会」をしてはどうかという意見が出ていた。あるいは老人福祉施設でワークショップをやるとか。この方向は見えた。この点では皆さんの方向性はかなり一致しており、まず間違いなく盛り上がるワークショップを重ねていくことができると思う。
問題は後者、外への発信だ。個人的にはCreative Commonsライセンスをどこまで採用できるかが、大事なポイントになると感じている。ただ、今日参加者の皆さんのお話をうかがっていると、法律論以前に、狭いコミュニティで、写真の提供者があとでそれを咎められるといった事態や、その他さまざまなトラブルを懸念する声もあり、そう簡単には行かなさそうだ。今日のところはきちんと正確な情報を、被写体や撮影者の立場を踏まえつつ入力していくということで落ち着いた。本来はメタ情報の正確性が保たれたとしても、デジタルデータとしての写真が自由に利用されてしまう可能性は排除できないので、その意味ではむしろ、CCライセンスを採用して、利用条件を明記する(その上で、条件に従って利用してもらう)のが、前向きな解決策でもあり、「写真の街」のアピールにつながるはず。実際このブログ記事でも、利用条件が明記された写真を、様式に従って紹介すれば、何倍にもインパクトが増すわけだ。ただそうはいっても、果たしてどこまで提供者から賛同を得られるかというところ。デフォルトをどのようにするか、提供者からどのように確認をとるか、どのような説明ならば受け入れやすいか。枝葉末節のように見えて、そこに非常に重要な部分がありそうな気がする。
自分自身がこの枠組でどこまでお役に立てるかわからないが、片足程度には足を踏み入れてお手伝いすることを約束し、少し予定を延長して話が続いている会場をあとにした。