「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」、三木谷発言をきっかけに紛糾


地方で大学教員をしていると、あんまり専門的見地から発言できないような内容の、役所の会議に呼ばれることがある。そういう会議では、役所の人たちがあくまでガス抜きの儀式として、会議をとらえていることが、専門用語がよく理解できない分、かえって良く見えることも多い。とはいえ、出来上がったレールが意図したものを理解して、すばやくその流れを変えるというのは、なかなか難しいものだ。

今回の薬事法の改正に関連する、「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」では、楽天の三木谷さんの激しい発言がきっかけとなり、「事務局一任」でパブコメにかけるという案が退けられた。この経緯はCNETの別井貴志さんが詳細な議事録を公開している。

もちろん楽天は、薬品のネット販売に利害関係を有しているので、そういう意味でどうしても抵抗しなければならない事情はあるのであろう。しかしながら、机を激しく叩きながら反論し、利害で対立する他の委員からも同意を引き出して、最終的に役所にスケジュールを変更させたのは、見事であった。

この手の役所による「誘導」は、実のところ、どこの審議会でも見られる光景だ。今回は委員の間の利害対立が鮮明だったので、その強引さが目立ったというだけの話。審議がガラス張りになり、できればリアルタイムで中継されて、傍聴に行かずとも議論の流れを人々が容易に知ることができるようになれば、きっと状況は変わるだろう。普通の人はあとから公開された議事録を読まないし、テレビもそれをとりあげないけれども、使いやすい状態で素材が提供されていれば、これを適切にまとめる人たちはいるはずだ。

たぶんもっとも手ごわいのは、こうした情報開示への抵抗だ。一般の人々は、利害関係者を除いて、こうした会議が行われていることにほとんど関心を示さないし、公開してもらいたいとも思っていない。だから、情報をいつどのような形で開示するかという問題は、瑣末な手続的な事項として考えられがちだ。なので、利害関係者をのけ者にしない限りは、事後的な議事録の公開があれば十分だということで、誰も抵抗しないというのが現状だ。

しかしネット社会にいる人々のスピード感からすると、事後的に公開されている議事録が、Live BloggingやUstreamで中継されるようになれば、関心の高い事柄への反応は、非常に早いものになると予想できる。即座にコメントしたりブログに書いたりする人が出てくるというだけではなく、「やる夫で学ぶ。。。」にまとめたり、動画を編集したりして、ときにパロディ作品も現わるというようなことが、即日行われるようになるかもしれない。もちろんそれは、役所にとって好ましい状態ではないかもしれないが、そこから先、衆愚とならないような参画の仕方をきちんと考え始める必要はあるにせよ、公開されていることがもたらすメリットを享受したいという声を、ネットユーザがもっと上げていくことが必要なのだろう。

その意味でも、TwitterやUstreamによるゲリラ的な中継を、「マニアの世界」として安易に貶めるのは危険だ。一般の人々が手に入れた中継「手段」は、よりオープンな議論を行うためにどのように活用できるのか、よく考えてみる必要があると思う。

スケジュール調整の結果、次回の検討会は11日に開催されるそうだ。Twitterでの「ゲリラ中継」があるのかどうか、注目しておきたい。

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