(新潟日報モアに2015年5月21日に寄稿したものです)
マレーシアに来て一ヶ月。マレーシアのローカルフードをいろいろ食べていますが、とりわけ「きしめん」のような麺には、注意をはらって過ごしています。
新発田のシンガポール食堂に、オッチャホイというメニューがあるのをご存知でしょうか。創業者がシンガポールで働いていた時代の料理を再現したもので、「きしめん」のような麺を使った焼きそばです。新発田市民には「ローカルフード」として親しまれています。このルーツにたどりつきたいという思いが、私を「きしめん」のような麺へと向かわせているわけです。

上の写真が、オッチャホイです。
マレーシアとシンガポールは陸続き。1965年に、マレーシアから追い出される形でシンガポールが独立、先に亡くなったリー・クアンユー首相(当時)が、涙を流して国民に独立を伝えたという話は、非常に有名です。
マレーシアでもシンガポールでも、この「きしめん」風の麺は、「Kuey teow」(クイティオ、クワイティオ)と呼ばれています(うまく発音できないのですが)。クイティオを焼きそば風に炒めもの「チャークイティオ」といい、この名前で売っているものはだいたいオッチャホイの味。店によってもちょっとずつ味は違いますし、「ノーチリ」といえば辛くないものも作ってくれますが、基本的にちょっとだけ辛い味付け(で、チリが別添えになっているので、足りない人は辛みを足します)になっていて、これもオッチャホイと同じです。

上は、4月に家に持ち帰って食べたクイティオ。居候先で買ってきてもらったものなので、どこのお店のものかはわかりません。

二枚目はマラッカイオンのフードコート内で食べたチャークイティオ。色としてはこちらのほうがオッチャホイに近いですね。
オッチャホイにも汁オッチャホイという、スープに入ったものがありますが、クイティオにも汁物があります。というよりは、麺類がいろいろあり、麺料理を頼むとどの麺がいいかという話になります。イエローミー、ビーフン、クイティオ、ヒーキャオなどがあるなかで、きしめんのごとく一番太いのがクイティオです。

上はマラッカ市内の十二間珈琲店というお店(珈琲店というカテゴリーで麺などの食べ物を出している店が多いです)で食べたもの。「汁クイティオ」という名前ではなく、「汁ワンタンミー」。ワンタンミーは、つまりワンタンメンで、「スープ」か「ドライ」を選択し、ドライだといわゆるオッチャホイの状態のものに、汁ワンタンが付きます。だいたいワンタンミーというと、細い麺を使うのですが、この店の場合には、太い麺を選べました。
「オッチャホイ」という名前で理解してくれる人は、シンガポールでもマレーシアでも、今のところ現れていませんが、この「チャークイティオ」が「オッチャホイ」と同じものと考えて間違いないでしょう。ただクイティオ自体は麺の種類の名称なので、オッチャホイという料理名とはやや意味合いが異なります。チャークイティオは「炒めクイティオ」と言っているのであって、それ以外のさまざまな麺料理にも、クイティオは用いられています。
さて結局、「オッチャホイ」という名前がどこから生まれてきたのか。マレーシアに来る前からの疑問が、解消したわけではありません。「オッチャホイ」に類する名前の麺料理が別にあるのかどうか。その答えにたどりつける気はしませんが、何かわかったら、また報告したいと思います。