あいかわらず「利用者不在」の新幹線駅名:「奥津軽いまべつ」「新函館北斗」

津軽今別駅・JR/海峡線 by Sosuke Sakai on Flickr

北海道新幹線の北海道北斗市までの駅名が決定しました。新青森からの先は「奥津軽いまべつ」「木古内」「新函館北斗」になります。

JR北海道は11日、北海道北斗市で建設が進む北海道新幹線の新駅名を「新函館北斗」、青森県今別町の新駅名を「奥津軽いまべつ」にすると発表した。札幌市の本社で記者会見した島田修社長は「多くの人に愛され、使ってもらえる駅になってほしい」と述べた。

 新函館北斗は「新函館」との仮称だったため北斗市側が反発。函館市との協議もまとまらず、両市はJR北海道に一任していた。禍根を残すことを恐れた同社は道に意見を求め、道は新函館の仮称がなじんでいるとする一方、立地する北斗市への配慮も求めていた。

 島田氏は「新函館北斗なら新幹線が函館行きであり、駅が北斗市にあることも分かる」と命名理由を説明した。

北海道新幹線新駅名は新函館北斗、奥津軽いまべつ  :日本経済新聞

北海道側の、駅の所在地である北斗市に配慮しつつも、おそらくメインの訪問地となる函館市の玄関口としての機能を重視して「新函館北斗」という名前になったということでしょう。たしかに北斗市のイメージはあまりないので、駅名に入ることにより、北斗とはどんなところなのか、想起してもらえる効果はあるように思います。

青森側の最北の駅「奥津軽いまべつ」の決定の経緯もまた、なかなかややこしいです。現在の駅が「津軽今別」で、新駅は「奥津軽」という駅名が当初予定されていましたが、今別町の提案に沿う形で「奥津軽いまべつ」に落ち着いたということです。

函館の集客力を前にすれば、現在の終着駅である青森ですら存在がかすみ、「通過駅」の存在になってしまう懸念があります。実際新青森開業の際にも、「函館まで延伸する前に、『通過駅』にならないよう自力をつけなければ」という話がでていたように記憶しています。はたして「自力」はついたといえるのか。青森出身者としては、実は正直、この点も心もとないです。

「北斗」は「函館」にくっついて名前が表示されることにより、存在を認知される可能性があるでしょう。北斗市については、ずーしーほっきーのイメージはありますが、そのほかは特に強く記憶に残っているものはありません。しかし駅の利用者はそれなりに見込まれるわけですから、これでも十分な宣伝効果があるのではないかと思います。

かたや「今別」はどうか。これは非常に苦しいところです。青森県今別町は、日本創成会議が先日発表した、全国市区町村別「20~39歳女性」の将来推計人口によると、2050年の「20~39歳女性」は、2010年の数との比較で-88.2%となる町です。人口も1200人台まで落ち込むと予想されています。あくまで予想といえば予想ですが、今別はつまり、圧倒的な「過疎」の町です。この今別を救済するいわば「起爆剤」として、「奥津軽」に「いまべつ」をくっつけるという案が提案され、採用されたということになります。地元が要望する気持ちは痛いほどわかりますが、この名前だけで、駅の乗降客が増えるとは考えにくいです。

ところでこれらの決定の経緯に、一般の利用者の利益はどれぐらい考慮されているのでしょうか。一般の利用者は、(鉄道ファンでもなければ)現時点でこれらの駅にさほどの関心はないので、どうしても「地元」の声が強まります。しかし長い駅名は、利用者にとってのメリットは少ないです。

上越新幹線では、「燕三条駅」がその典型でしょう。隣接する燕市と三条市、どちらの駅名にするかなかなか決まらず、結局2つ合わせた駅名になったと聞いています。「燕」が先か「三条」が先かが争われ、「燕」が先になったけれども、駅長室は三条市になったというような話を聞いたことがありますが、正確なところはわかりません。つまりそれぐらい、駅名をめぐる争いは激しかった。しかし今はどうでしょうか。実は燕市、三条市というそれぞれの存在よりも、圧倒的に「燕三条」という地名が存在感を得ています。他県の方の中には、燕市と三条市ではなく、燕三条市として認識している人もいるのではないでしょうか?

「奥津軽」という切り口はこれまで認識されてこなかったもので、青森の中でも津軽半島の北部には、津軽海峡をのぞんだ雄大な自然があるのではないかという、印象を持たせてくれます。そこに「いまべつ」をつけるかどうかは、正直利用者にとってはどちらでもよかったのではないかと思います。今別町にとっては、短期的に町の知名度があがるという効果がありそうですが、それだけでは乗降客は増えないと思います。むしろ「奥津軽」としてのブランドをどう築いていって、新青森でもなく新函館北斗でもないこの駅を、どうやって利用してもらうかを考えることが大事ではないかと思います。

さもなくば、新函館北斗駅に向かう乗客に、「誰もいないのになんで止まるんだろうなあ。政治駅だよな。」といわれる存在になってしまうことでしょう。

(Yahoo!ニュース個人より転載)

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