原武史『震災と鉄道』 (朝日新書)

今日、日帰りで東京まで行ってきた道すがら、読み終えた本。アマゾンのレビューは今のところ、なかなか厳しい。

日本政治思想史が専門の原先生による、鉄道の話。もちろんかなりの「鉄分」を感じさせるのだが、それだけではない。被災した三陸地域の鉄道が、いまどのような扱いを受けているか。これまでどのような扱いを受けて、利用率の低い路線になってしまったか。
一方新幹線のネットワークを広げる中で、日本が失ったものは何なのか。

「非鉄系」の自分は、JR東日本の営利追求を批判する姿勢を、当初割り引いて読んで始めたが、次第に「鉄道を通して見えるもの」がわかるような気がしてきた。山田線、三陸鉄道、気仙沼線などに乗ってみるのはもちろん、北海道の廃線跡も、ぜひ訪れてみたいと思った。情報系の研究者や企業人には、鉄系の人が非常に多く、自分には提供できる話題がなかったのだが、この本をネタに共通の話題ができそうだ。

アマゾンのレビュアーたちが述べるとおり、公共的な政策としてどこまで現実的なものになりうるのかは、よく検討が必要だろう。しかしこの「鉄系」の発想には、拡大路線が望めない日本が、効率化のために地方を切り捨てるのではなく、地方も含めて活性化させ、身の丈にあった幸福を追求するためのヒントが、隠れているように思った。
震災を切り口としながら、基本インフラとしての鉄道をどのように支えていくべきなのか、非常に示唆に富む一冊。

「鉄学」概論―車窓から眺める日本近現代史 (新潮文庫)

日仏先端科学シンポジウムで、ソーシャルメディアについて報告

フランスニースで開かれた日仏先端科学シンポジウムに参加してきた。

先端科学シンポジウム-日本学術振興会

プログラムびっしり

このシンポジウムは、「平成17年3月27日の日仏首脳会談において、次世代のための日仏学術交流強化について合意された事項の一つとして、平成18年度からフランス政府との間で、実施」しているもの。日本側のアレンジは、独立行政法人学術振興会が行っている。

研究領域は、Earth Science/EnvironmentからSocial Sciences/Humanitiesまで、8分野にわたり、それぞれの分野の研究者が、両国の先端的な研究成果を発表するとともに、分野を超えた議論を行うというもの。8分野といっても、「文系」の領域は、Social Sciences/Humanitiesの1領域のみで、ほかは「理系」の各領域。今年のSciences/Humanitiesのテーマがネットワークということになり、このテーマで話ができそうなスピーカーとして、お声をかけていただいたという次第だ。人文社会科学を代表する1人として、と考えると荷が重いが、「ネットワーク」について人文社会科学の立場から話す、と気が楽になるよう解釈して、お受けすることになった。

自分以外のメンバーはほとんどが国公立、それも東京大学、京都大学などのトップ校に所属している理系の研究者たち。フランス側も国立の研究所に勤めている人が多かった。正直なところ、数学、物理、生物、医学等他分野の研究内容を十分消化できたとは言い難いが、それでもいくつかの領域では、いまぶつかっている課題がある程度理解できた。同じ「科学」ということではあるのだが、人文社会の立ち位置は(少なくとも見かけ上は)特殊。さらに、地方私大にいる自分のような立場からすると、期待されている仕事の内容、経験、与えられた環境、いろいろなものが違うなあと感じた部分も多かった。もちろん、そうした要因と、シンポジウムで与えられた期待とは無関係であるので、自分なりに準備して臨んだつもりではある。

人文社会のセッションでは、限られた時間の中で、1) 世界的なFacebookやTwitterの勢いが、各地の社会運動を後押ししていること、2)独自の環境を維持していた日本や韓国も変わりつつあるが、日本ではそれが社会運動につながる機運はほとんど見られないこと、3)東日本大震災はこうした状況下で起こり、ソーシャルメディアの重要性を、別の意味で認識せしめた、といった話をした。震災から1年弱の間に、シンポジウムなどで他のパネラーから教えていただいたことを踏まえ、自分なりに考えたことを述べた形だ。

自分なりに分かりやすさや長さを考え、話す内容を調整するとともに、「食べログ」問題など新しいトピックも適宜盛り込むようにした。結果的に時間を超過してしまったが、それなりに言いたいことは伝えられたとは思う。その後ゲーム理論を応用したフランスのスピーカーからの報告があり、さらに60分にわたる長時間の質疑応答となった。自分が提起した問題については、恐らく多くの人が理解してくれたように思うが、僕自身が質疑応答で柔軟に対応できる言語能力を持っていなかったため、それぞれの人の質問が求める方向性を今一つ正確に把握できず、残念ながら議論を十分に尽くせたとはいいがたかった。これは大きな反省点。チェアとして仕切ってくださったNII上田先生や、PGMの東京大学岡本先生の力により、なんとか乗り切ることができた。

以下は利用したスライド。タイトルはセッション全体のものなので、ちょっとズレている感じがすると思うがご勘弁を。

会場となったホテルは、ニースの海岸に面したリゾート地。もちろん全セッションに参加するため、セッションの間は会議場に缶詰めになるのだが、朝や昼の休憩時間には、少し散歩する時間をとって、散歩をしたり写真を撮って歩くことができた。時差ボケもあり、妙に早起きだったのだが、残念ながら冬のニースの朝は暗く、7時半を過ぎないと明るくはならなかった。土日をはさんでの開催だったので、週末を楽しむ観光客に遭遇したのはつらかったが、シーズンオフのニースが奇跡的に好天に恵まれたようで、少しだけニースの楽しい雰囲気を感じることはできた(のだと思う)。また、到着してすぐや終了後の自由時間で、周辺の様子を見ることはできた。

Nice, France

今後もこの取組に参加させていただけるかどうかは分からないが、少なくとも今回経験させていただいたことをベースにして、国際的な研究交流の文脈で、自分なりの発信を続けられるよう、努力を続けていきたいと思う。

以下は休憩時間や早朝に撮った写真。

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