20日、文化審議会著作権分科会の「基本問題小委員会」の第一回会合が開催された。すでに多くのメディアでも記事が出ているが、Copy & Copyright Diaryにも、大変詳しい傍聴記を書かれている。毎度のことながら、頭が下がる。
リンク: 基本問題小委員会傍聴記 – Copy & Copyright Diary.
権利者側と目される委員が多くを占め、これまで委員として消費者・ユーザよりの発言をしていた委員が外れた。主婦連の河村真紀子さんだけが残り、津田大介さんや中山信弘先生は外れた。ここに何らかの意図を見るべきか。上のリンク先では、過去の委員会委員と照合して、今回外れた人、留任した人、新任になった人を列挙している。
委員会は、延長問題にせよ、フェアユースにせよ、権利者側の立場からの意見が非常に強かったようだ。
唖然とするような意見が並ぶ中、欠席された苗村先生の意見(事務局代読)が、もっともうなづける内容である。
著作者対利用者の対立を前提とする議論はすべきではない。技術進化・国際状況の変化を前提に、その本質をみて議論を行いたい。その際には、法学だけでなく、学際的見地からの議論を行うべきだ。
また中村伊知哉先生や、宮川美津子先生のコメントも、Internet Watchを見る限り、しごくまっとうな意見だ。
リンク: 権利者軽視では結論出ない? 著作権制度「大所」からの議論開始.
著作権関連施策を検討するにあたっては、法制度で対応するだけでなく、税制財政面からのアプローチも有効ではないかと語ったのは、慶應義塾大学教授の中村伊知哉氏。「著作権法を変えるには時間がかかったり、議論が膠着するケースが大半。それであれば、法制度から対応するのではなく、マーケットや文化をどう
やって具体的に作っていくのかと考え、それらを税制財政からどう支援するかなど実体面からのアプローチもあると思う」。
このほか、弁護士の宮川美津子氏は「これまでの議論は、名前や立場を聞いただけで発言が見えてしまっていた。基本問題小委員会では、『デジタル機器が発
達すると権利者が損害を受ける」といった常套句や決まり文句を使わず、ステレオタイプな考え方を捨てて議論してもらいたい」と呼びかけた。
というわけで、権利者側の意見だけがやたらに強いわけではないし、法律論でこう着しがちなところを、関係者にメリットをもたらす形で妥協させようという考えも出ていて、そんなに偏った議論ではないのかもしれない。ただこうした学際的アプローチが、法律論を主に議論してきた、文化審議会著作権分科会でうまく機能するかどうかは、未知数であろう。
とりあえず当面は、近々に解決すべき課題があるわけではなく、権利者側の過激な意見をどんどん主張してもらいつつ、他の委員がそれをとりなして、落としどころをさぐるような展開になるのだろうか。実は文化庁側も、この委員会のミッションをきちんと定義できておらず、利害対立というか業界の主張を吐き出してもらうことを、もっぱらの目的にしているようにも思える。
以下はCopy & Copyright Diaryのまとめ。
自由討議の場
面で、いで委員から文化庁に対して、「この委員会は何を求められているのか、私的録音録画補償金や延長問題といったここの問題を検討するのか、それよりも
もっと大きなことをやるのか、文化庁はそれを明確にして欲しい。個別の問題を検討しないのであれば、評論家に出てもらった方がいい。」という質問がなされ
た。
それに対して文化庁の山下課長は、「事務局としては議論の進め方も含めて、委員の皆さんの意見を伺った上で判断したい。今年度中に結論を出さな
ければならないということは今は無い。補償金も延長問題も大事だが、フェアユースについては法制問題小委員会で検討を行う。今後の進め方も、今日頂いた意
見を元に判断したい」と、訳の分からない説明がなされた。
こうした表面的な動きとは別に、なにか「基本問題」にかかわる法案提出につなげようという目的があるのかどうか、上のまとめからうかがうことはできない。ともあれ、権利者側の意見がかなりはっきりと見て取れる委員会になろうだろうし、ネットユーザの意見や認識とのずれも鮮明になるはずなので、注視していくことが大事になるだろう。