国立大学の統廃合私案と地方私学の立場


国立大学の統廃合を勝手に考えてみた記事が話題になっている。かなり大胆に大学を統廃合し、地方には中核大学だけを残すという考え方だ。東京の人から見たらまあこんなもんだろうという線だし、地方の人から見たら暴論だ。はてぶでの反応もおおむねそんな感じ。

リンク: 国立大学の統廃合私案 – Chikirinの日記.

橋下府知事が「大阪府立大学なんか要らないのでは?」と言ったとか言わないとか、という報道を聞いて、「要らんよね、たしかに」と思ったちきりん。ふとそのことを口にだしたら近くにいた知人が言った。「府立大どころか、国立大学だって半分くらい要らないと思うよ。」と。

で、ふたりで「国立大学って何校必要?」ってのを勝手に考えた。そもそも現時点で何校あるのかも知らなかったので文部科学省のサイトの一覧を一緒に見ながら考えた。放送大学を含め88校あるらしい。

って聞いただけで「あ~、確かに多すぎだね」と思った。公立大学(都道府県や市立の大学まである)を除いた国立大学が88校なんて直感的に「多すぎ」って気がします。明らかに民業圧迫。

だいたい18歳人口はもうすぐピークの半分以下になるんだから、普通に考えれば大学の半分は不要になるはず。国公立が税金を背景に「赤字でも倒産しない」という特権を振り回せば民間の大学にその分のしわ寄せが行く。そもそも国も地方も財政赤字なんだから、だったら率先して撤退すればすべて丸く収まるじゃん。

ということで、勝手に「ここ残す」「ここ要らん」と決めて見た。

これに対する反応は、以下に整理されている。

小飼弾さんの「いっそ東大と京大だけにしちゃったら?」という提案(すべての国立大が東大か京大の分校になる)もなかなか面白い。

さて、僕が所属している敬和学園大学のような地方私大の立場はどうなるか。最近大学に関するこのような話題からは、なるべく離れるようにしているのだけれども。

単純に考えれば、国立の収容定員が削減された場合、私学に入ってくる学生は増えることになるのだが、たぶんそう単純なことではない。こういうドラスティックな提案が国立について議論され、まとまってくる頃には、多くの弱小私大が退場させられている可能性が高い。「弱小」の中でも、大都市圏と地方のどちらがいいのかはよくわからないが、学生が大都市圏に流れがちなのはたしかだ。はてぶのコメントでも、「私学の淘汰が先」という声は多い。

こうした激動の時代にあって、「弱小」のカテゴリーに入る私学は、吹けば飛ぶような存在だ。日ごろ「弱小」の中で語られていることというのは、台風で吹き飛ばされるグループの中での競争に関することばかりで、そのときがくれば吹き飛ばされるということには変わりないよなと、ときどきさめた気持ちにもなる。

加えて大学の場合、学生数は年に一度の機会で確定する(退学したり、秋入学を実施したりはしている)ので、一般企業のようにたゆまぬ「営業努力」で日々改善するというようなことも難しい(努力はできるが、成果が出るまでに時間がかかる)。したがって、自分たちをめぐる環境が、不利な方向に急激に変化しても、それにあわせて体制を組みかえるのは困難だ。

というような現状を考えて暗澹たる気持ちになった場合、自らの研究に注力して、市場の変化に強い「自分」を作ろうとするのが、普通の大学教員の姿であろう。もちろん、立場や年齢などによって、行動パターンは変わってくるのだけど。

ただ教員がそれぞれの活動だけにまい進した場合、大学には遠心力が働いてしまう。そうならないようにするためにも、市場の変化に強い大学を作るための経営側のイニシアチブ(かつそれに対するコンセンサス)というのは、非常に重要だ。「ワンマン理事長がわけわからんことを教員に押し付けている」と教員たちが思っている私学というのは、総じて教員のロイヤリティは低い。ベストなのは、個々の研究活動をきちんと吸い上げて、求心力に変えていくことではないかと思う。余談だが、小林啓倫さんへの「今週のリーダー」インタビューは、企業でのチーム作りに関する話だけれども、なにか大学の組織にも通じるものを感じた(リーダーは、メンバーの目指すゴールを理解すべし - @IT自分戦略研究所)。そのサイクルさえできていれば、研究型大学とか教育型大学という区別は関係なく、少なくとも教員の活動レベルでは活気が出てくると思うし、それは大学それ自体の活気につながってくるだろうと思う。

 

1 個のコメント

  • 国立大学の統廃合検討

    いっそNTTよろしく、国立大学は東西二つの大学にして、東は全て東京大学、西は全て京都大学にしてしまうというのはどうだろうか。国立大学の生徒は、すべて東大生か京大生というわけである。嫌がるのは、「旧」東大生と京大生だけだったりして。 …

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