モスクワに行くならこの一冊、岩本和久『情報誌の中のロシア』


稚内時代の同僚、岩本和久先生の新作。
ずいぶん前に、版元の東洋書店さんを通じて、お送りいただいていたのだが、ほかの郵便物にまぎれて気づくのが遅れてしまった。まずは献本に感謝。

ちょっとおおげさに「モスクワに行くならこの一冊」としてみたが、「この一冊をもっていくべき」という感想は、そんなに外れていない。「モスクワ」の部分は、「ペテルブルク」も対象なので、ちょっと違うのだけど。

 

1月に出された本について、僕は以下のように書いた。

リンク: ICHINOHE Blog: 岩本和久『トラウマの果ての声』.

僕のロシア文学に関する知識は絶望的なほど乏しいのだが、岩本先生は現代ロシア文化にもかなり造詣が深く、僕自身のアジアへの関心と同じような角度でも、
興味深い発言をされる。今回の本がそうした趣のものかどうかはわからないけれども、副題が「新世紀のロシア文学」であるから、少なくとも近時の動向に即し
た内容になっているにちがいあるまい。少なくとも「翻訳された現代ロシア文学作品についてのブックガイド」というのは、僕のような人間の道案内にとして役
立ちそうだ。

それに対して岩本先生は以下のようにトラックバックを送ってくださった。

リンク: カムチャツカの雪: トラウマの果ての声(ICHINOHE BLOG).

残念ながら,今回のは文学の本なのだけれども,取り上げている小説の登場人物がピカチュウとニドキングだったりするので,そのあたりで大目に見ていただければと……。「文化」寄りの仕事もそのうちできるかと思います。

今回の「情報誌の中のロシア」は、まさしく「『文化』寄りの仕事」で、目次は以下のようになっている。

  • はじめに
  • 第一章 ロシアの情報誌
  • 第二章 映画館
  • 第三章 クラブ
  • 第四章 展覧会
  • 第五章 書店
  • 第六章 劇場
  • 第七章 スポーツ
  • 第八章 都市の変容
  • おわりに

この本のコンセプトは「はじめに」で、以下のようにまとめられている。

本書ではモスクワやペテルブルグで刊行される情報誌を手がかりに、ロシアの新しい都市風景を語ってみたい。情報誌やその編集による旅行ガイドブックの中から、いくつかの場を紹介してみたい。それにより、報道や一般の観光案内書に見られるステレオタイプなロシア・イメージとは異なる風景をつかむことができるはずだ。

この狙いは見事に成功している。「アフィーシャ」「ヴァーシ・ダスーク」という二つの情報誌の紹介をはじめとして、さらにそこに現れるようなスポットについて、老舗から新興勢力までバランス良く紹介されている。同時に本書は、それらの歴史的背景とかあるいはすでに消えてしまったスポットのことも含め、副題のとおり「文化と娯楽の空間」について、モスクワに行ったことのない僕にも、わかりやすく伝えてくれる。

岩本先生は、2000年度後期に、小渕フェローシップでモスクワに滞在された。僕は世間知らずの新任教員だったので、岩本先生が半年間不在になることをめぐる、意外なほどに紛糾した議論のことが、懐かしく思い出される。そしてその成果として、この一冊も位置づけられるのだなあと、以下のエントリーを読みながら、感慨にふけった。

リンク: カムチャツカの雪: 小渕フェローシップの思い出.

2000
年のモスクワというとプーチンが大統領になったばかりの頃なのですが,僕自身はと言えば,文書館で閉館時間まで作家オレーシャの草稿を読み,その後は映画
館やライヴに出かけるという日々を繰り返していました。疲労で倒れてしまいそうな日も,夜になると,重い足を引きずりながら街に出ました。職場を離れてモ
スクワで過ごすことのできる貴重な時間に,できるだけ多くのものを見ておきたかったのです。また,そうしなければならないという,義務感のようなものもあ
りました。

僕にもその後チャンスがあり、実はマレーシアに半年間滞在できる可能性もあったのだが、結局僕は万難を排してその可能性を追求しようとしなかったので、延べで1ヶ月半の滞在をするだけに終わった。それでも数週間の滞在から僕が得たものは多かった。岩本先生のように毎日図書館に通うというような学究的な時間ではなかったが、夜になってKLの街の中を歩き回る機会は、たくさん与えられた。

旅行者にとって、「地球の歩き方」をはじめとするガイドブックは、右も左もわからない時には、非常に心強いガイドになるのだけれども、滞在期間が延び少し街の様子がわかってくると、情報誌に載っているような、「普通の人のいるところ」にいきたくなるものだ。また街歩きの好きな人はとくに、それぞれの街それ自体の歴史とか、古い建物にまつわる歴史などに、興味がいく。

昨年台湾を訪れたときには、片倉佳史さんの、植民地時代に作られた建造物を紹介する一連の著作が、非常に役に立った。同じ意味で、今回の岩本先生の著作は、モスクワを訪れる際に、ぜひ持っていきたい一冊である。

岩本先生が1月に出された著作。

トラウマの果ての声―新世紀のロシア文学
岩本 和久
群像社
売り上げランキング: 39517
おすすめ度の平均: 5.0

5 ロシアはやはり日本と似ている
5 なかなかの労作です!!!

台湾旅行の際に、僕が読んだ、片倉佳史さんの台湾関連著作は以下の通り。

観光コースでない台湾―歩いて見る歴史と風土
片倉 佳史
高文研
売り上げランキング: 72946
おすすめ度の平均: 4.0

5 間口は広いが深い
3 よく調べている

台湾―日本統治時代の歴史遺産を歩く
片倉 佳史
戎光祥出版
売り上げランキング: 304472
おすすめ度の平均: 4.0

5 深い
2 良くも悪くも
5 これまで全くなかった台湾本

2 件のコメント

  • 台湾で買ったヨーグルト

    台湾のコンビニエンスストアーの全家(ファミリーマート)で買ったヨーグルト。横には日本語のひらがなで”つぶつぶ”って書いています。上の蓋はレイニーヤンがヨーグルトを食べている写真が載っています。少しピンボケていますが分かりますか?

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