映画「アイリス」のことを思い出した


大叔母が晩年どんなことを考えていたのかなあと想像しているうちに、どこで見たのか忘れてしまったが、「アイリス」という映画のことを思い出した。

1950年代、恋愛経験豊富で奔放なアイリスと純粋な青年ジョンはオックスフォード大学で知り合った。これまでの男性にはないジョンの誠実さにひかれ、ふ
たりは結婚。才能豊かなアイリスは小説家とした大成する。しかし、老人となったアイリスに突然アルツハイマーの症状が現れる。物忘れがひどくなっていき、
行動も言動も、これまでのアイリスとは思えぬものに。そんな自分の変化にとまどい、心がますます乱れていくアイリス。ジョンは彼女に誠心誠意つくすが、彼
も介護生活に疲れ果ててしまう…。

若い頃の思い出も経験も言葉も立場も、すべては少しずつ記憶の中から消えていく。その現実に向き合った夫婦のことを、淡々と描いた話だったように記憶している。

いろんな記憶が失われてたときにも、それでも残る芯の部分はあるのだろうか。芯が残るとすれば、芯の部分は、
失っていく記憶に対して、どんな気持ちを抱くのだろうか。

僕の弟は、死を迎えるまでの時間に実際には何か思いを抱くことができたのだろうか、できたとしたらどんなことを?っ
ていうことを、答えが出るはずもないのに、ずっと考え続けている。大叔母は、失われていく自分の記憶と、どんな風に格闘していたのだろうか。晩年彼女の頭の中に去来して
いたものを、もう確認はできないのだけれども、静かにそのことを思い、送りだすつもりだ。

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