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新潟出身の漫画家が埼玉をおちょくるマンガ「翔んで埼玉」

新潟出身の漫画家魔夜峰央さんが、1986年に描いたマンガ「翔んで埼玉」が話題だという。埼玉の大学でも授業を担当している自分としても、ぜひネタとして(?)勉強しておこうと思い、早速買って読んでみた。爆笑しながらあっという間に読んでしまった。

新潟出身の漫画家魔夜峰央さんが、1986年に描いたマンガ「翔んで埼玉」が話題だという。埼玉の大学でも授業を担当している自分としても、ぜひネタとして(?)勉強しておこうと思い、早速買って読んでみた。爆笑しながらあっという間に読んでしまった。

表紙には「埼玉県民にはそこらへんの草でも食わせておけ!」とかなり過激。ほかにも「サイタマラリヤ」「埼玉狩り」など、いや「架空」とはいいながら、これ大丈夫か?という表現が満載だ。昨今の世論は、こういう「笑い」を許さないような気がするのだが、「80年代に描かれたもの」ということでセーフということか。

実はこの復刻版が発売になる前に、ネット上でこの作品が話題になり、中古価格が跳ね上がっていたのだそう。

舞台となっている埼玉もノリノリ(?)のようで、新所沢パルコでは、「翔んで埼玉祭」を開催する。

渋谷パルコに『翔んで埼玉』の巨大看板が出現!「新所沢パルコ」から異例のオファーで、大規模コラボレーションが実現!|株式会社 宝島社のプレスリリース

 また、埼玉県の所沢市、行田市、飯能市の3市長から応援コメントをいただいたほか、上田知事からは「悪名は無名に勝る」といったコメントを寄せられるなど、県内自治体も歓迎ムードに沸いています。さらには、「一緒に新所沢を盛り上げてほしい」との新所沢パルコからのオファーを受け、異例のコラボレーションが実現。“翔んで埼玉祭”と銘打ち、2016年4月28日~5月8日の期間、コラボレーションしたポスターや看板、交通広告、新聞広告の実施、渋谷パルコpart.1 横にも巨大看板が出現するほか、魔夜さんのトークショー&サイン会などのイベントを開催するなど、県民の懐の深さを表しています。

内容は「差別された埼玉県民の逆襲」とでもいうべきもので、逆襲が成功したのか失敗したのかなど、話は完結していないのだが、まあ完結することが重要な内容ではない。80年代の世論の中にあった、「ネタとしての埼玉」を徹底してギャグにしているところがポイントで、それは今でも多くの人達に共有されているところなのだろう。同様に茨城もさらに「下層」の人々として描かれている。ただ当時はほとんど話題にならずに終わった作品なのだそうで、こういうニッチなものが爆発させるには、ソーシャルメディアの口コミが必要だったということなのだろう。

ところで魔夜峰央さんは、新潟出身の漫画家の代表格の一人。漫画の街を自称する新潟市としては、ぜひ新潟も話題にして欲しいところなのだけど、さて、埼玉同様に新潟をおちょくるような内容を描くことはあるのだろうか。新潟については、以下の記事で言及されている。

魔夜峰央さんが語る『翔んで埼玉』未完の本当の理由 〈dot.〉|dot.ドット 朝日新聞出版

――ご出身の新潟県はおちょくっていませんが、どんな県民性を感じていますか?

新潟はとにかく一年中曇っているんですよ。雲一つない青空というのは、所沢に引っ越して生まれて初めて見たような気がします。新潟は大きくてすてきな都市ですが、一年中暗い感じなので、やはり県民性も若干重いんじゃないかなと思いますね。だから下手に新潟をおちょくったりしたら、どわぁ~ん、じゅわぁ~ん、とね……。決してガーガー文句は言わないでしょうけれど、黙って五寸くぎでわら人形を打ってくるんじゃないかと思います(笑)

自分も新潟に来て10年近くたち、学生をはじめ、「ガーガー文句は言わない」人たちと長らく付き合ってきたので、おそらくその間にいくつもの「五寸くぎをわら人形」に打たれてきたのではないか。そんな気分になった。

ともあれ当時、首都圏の中でのおちょくり合いは、たしかに東京発メデイアにはあふれていたが、首都圏の外にある自分たちは、そういうものとは全く関係ないところにいた。こうした首都圏の中でのからかいを遥かに超えた田舎で生活している中では、たとえば青森の人々だと、吉幾三の「おら東京さ行くだ」にあらわれているように、田舎っぷりをむしろ自虐的にアピールしているようなところもあった(あるいは、そのようなアピールする一部勢力を、苦々しく思っている青森県民もいたかもしれない)。

よく作品の中を見ると、一箇所だけ「新潟県人はいいのか」というくだりがあるほか、巻末のコラムでは「裏日本随一の大都会、新潟」という表現が出てきている。「首都圏の中でのおちょくりあいをギャグ化する新潟県人」というおかしさを、魔夜さん自身も感じていたようにも読める。

トンネルを抜けた先にある「裏日本随一の大都会」も、首都圏とは異なる異質な「惑星」として、作品になりそうだが、「どわぁ~ん、じゅわぁ~ん」な体質なので、おそろしくておちょくれないかもしれない。