タグ別アーカイブ: 情報メディア

敬和学園大学学生たちが制作したLIPDUB公開

今月一戸の中国出張中に撮影された、敬和学園大学の学生たち制作による「口パク」ビデオLip Dubが本日完成し、公開された。いろいろ「あら」を探せばきりがないのだが、専門的な教育を受けていない学生たちがよくここまでがんばったと思う。この作品は、第1回国際第二言語「LIP DUB」コンテストに参加している。

関連動画にも出てくるが、大学生がキャンパス内で撮影して発信するLip Dub作品は、数年前から多数作られている。新潟県内では、新潟県立大学の学生たちが昨年の学園祭で制作し公開、今年に入って新潟青陵大学も制作・公開している。

映像制作の習得過程で、「勝手PV」の作成というのは、一番最初の実習課題として使われると聞く。ある程度決まったフォーマットで、出演者の動き方、カット割りなど、映像を制作していく上で重要な要素を、短時間で習得できるからではないかと思う。逆にいえば、基本的なことを習得した人が関係者に増えれば増えるほど、映像の質は格段にアップし、Lip Dubをはじめ、「敬和初」の良質な映像作品がもっともっと発信されることになるだろう。そのとき、皆さんの通っている敬和学園大学は、よい意味で「大化け」します(断言)。

今夏8月6日により、映像制作を中心にした授業「現代メディア論」(高谷邦彦先生)が始まる。集中講義初年度ということで、様子見を決めている学生が多いかと思うが、皆さんが映像制作のイロハをマスターするための「大切なこと」が、この授業にはすべて入っている。最終日には上映会も行う予定。科目登録の有無にかかわらず(また配当学年ではなくとも)、映像作りが楽しかったという学生の皆さんは、まず参加を検討して欲しい。

敬和学園大学のLIPDUB、撮影終了:デレク・シヴァーズ 「社会運動はどうやって起こすか」を思いだした | ICHINOHE Blog

敬和学園大学で新プログラム「情報メディアプログラム」スタート | ICHINOHE Blog

岡田朋之・松田美佐編『ケータイ社会論』(有斐閣選書)

ケータイを通して現代社会を学ぶ、主として社会学系教員からなる入門書。2002年の『ケータイ学入門』の全面リニューアルという位置付けだ。「社会とケータイのかかわりについて、できるだけ多様な側面から光を当てよう」という趣旨での改定。執筆陣には、新潟大学から、博士研究員の上松恵理子先生、人文社会・教育科学助教の吉田達先生が加わっており、お二人から献本いただいた。どうもありがとうございます。

全体に目を通すに至ってはいないが、目次と、編者のお一人関西大学岡田朋之先生による、第一章を読んだところで、雑感を書いておく。

この本では、「ケータイ」という言葉により、携帯「電話」としてではない多能な側面を表現している。大変興味深いのは、IT、情報化、若者文化、青少年保護、教育といったセクターで、それぞれの(業界の?)立場からケータイが毀誉褒貶にさらされてきた、という見方だ。これに対して本書では、「ケータイをはじめとする情報メディア」が、これらの各領域それ自体を揺るがしている(恐らく教育分野が念頭にある?)中で、いわば部分最適ではなく、トータルな最適化、総合的視点の必要性を強調している。

Say goodbye...

Photo by Cheo70 on Flickr.

実際この本の提示するトピックは多様だ。全体を貫いているのは、「社会的存在としてのケータイ」「当事者の視点」の二つの視点。ケータイは、技術的側面ばかりが注目されがちだが、「さまざまな立場の人々がさまざまな思惑のもとにかかわることで具体化しているもの」であるという意味では、社会的存在であるということ。この視点が一つ目。二つ目の「当事者」というのは、送り手や売り手ではなく、利用者の目線ということ。利用者の目線で見たときには、ケータイをめぐるさまざまな領域の実情が見えてくるということだろう。

章建てとしては、メディアとしてのケータイ、さらには、普及や多機能化に至るケータイの歴史といった、オーソドックスな記述に加えて、コミュニケーション、自己意識、身体感覚と言った側面、家族コミュニケーションのあり方、ケータイと学校教育という側面にも光を当てる。教育とケータイ、もう少し広げて、教育と情報機器、というのは、現在も微妙な緊張関係をはらんでいる。大学で同僚と話していても、電子機器やネットへの理解がネガティブなイメージに固まっていて、なかなかうまく話を進められないことは多い。まして初等中等教育では、こうした緊張関係は現在も非常に強いと聞くし、まさしくこの本の取り組むべき肝の部分だろう。第7章は新潟大学博士研究員の上松恵理子先生のご担当。

終盤はさらに視点を広げ、ケータイがもたらすネットとリアルの交錯(たとえばARなど)、ケータイと監視社会、流行や風俗上のアイテムとしてのケータイ、などのトピックが登場するほか、海外のケータイ事情について、11章で韓国、フィンランド、ケニアが取り上げられている。「監視社会」が新潟大学吉田達先生のご担当。

全体を通読してはいないのだが、印象としては、「社会的存在としてのケータイ」をさまざまな側面から分析するにあたり、ケータイや情報化社会のネガティブな側面にも一定の配慮をしてはいるものの、ことさらに不安をあおる立場には与することなく、ある種の中立性を保っているように感じる。こうした「入門書」が、メディアやネットに比較的ネガティブな立場をとる「文系」の大学・学部の教育課程に導入されていくならば、徐々に大学の教育課程にもよい変化がもたらされるのではなかろうか。

[rakuten]001:9784641281257[/rakuten]

リクルート進学ネットに掲載していただきました。

リクルートの受験生向けサイト「リクルート進学ネット」で、一戸個人を紹介するページを作っていただいた。
ノートPCを持ってうろついているという、不自然な姿を切りぬいた(?)画像付き。中身は撮影の際にお話しした内容をベースに、構成していただいた。

敬和学園大学/先生・教授(一戸 信哉准教授)(語学(外国語))/リクルート進学ネット/大学・短期大学・専門学校の進学情報

 

敬和学園大学を紹介するリクルートのページの一部として、毎年一人の教員をピックアップしているものなので、人文学部の傍流の自分が紹介されるのもどうかと思い、以前誘われた時には固辞していたのだが。リクルートの営業担当の方や入試課メンバーの推薦もあって、一度登場してみることにした。

ちょうど情報メディアプログラムがスタートするタイミングでもあり、興味を持ってくれる受験生が増えてくれればと思う。

20110714 Keiwa Lunch

敬和学園大学で新プログラム「情報メディアプログラム」スタート

敬和学園大学で、今春から、いくつかの新科目がスタートすると書いた。

実はもう一つ新しくスタートするものがある。既存の科目のうち「情報メディア」に関連する科目を履修することで、一定の能力があることを証明する「プログラム」として、「情報メディアプログラム」が4月からスタートする。人文学部一学科で、情報やITとは無縁に見えた敬和学園大学だが、このプログラムはその中では、大きな変化だ。新潟で情報やITといえば敬和が一歩進んでいる、あるいは特色がある、そういう認識を持ってもらえるよう、プログラムの充実を図っていきたい。このプログラムのスタートは、敬和の情報メディア教育全体を変革する「狼煙」のつもりだ。

20110714 Keiwa Lunch

Keiwa Girls

敬和には、従来から「日本語教育プログラム」などの独自認定の制度があったのだが、今回のプログラムはこれに追加する形。所定の科目のうち、32単位を修得することで認定される。現行カリキュラムのままのスタートなので、現在の在学生も認定を受けることができる。ただ現時点では、一戸の演習の単位を含めないと、32単位を積み上げるのは難しいかもしれない。まあ演習の参加者数は少ないので、他ゼミに参加している方でも(国際文化学科以外の学生でも)、時間割の調整がつくなら、どうぞご参加ください(お客さん扱いはしません)。

このプログラムの構想は、1年前からあった。1年前に学内調整用の資料として作ったスライドは以下の通り。提案段階での文書なので、詳細部分まで承認を受けたわけではない。個人的に作成した文書だと理解してほしい。

「副専攻」として情報メディアを学ぶ

敬和学園大学は、「リベラルアーツ大学」を標榜しているが、情報教育は従来「外付け」のポジションで、共通基礎科目の一角に、選択必修科目として置かれてきた。学生の情報リテラシーの向上や一般科目での情報機器、ネットワーク利用が広がる今日、この位置づけは徐々に変化していくべきだという考えも、このプログラムを設置を推進した背景にある。

学生たちにとって、このプログラムの修了証が、何か明るい未来を保証する手形になるかというと、そうではない。どちらかというと、「副専攻」のような位置づけで、情報メディア関連の科目をとらえて、高い意識を持って勉強をするきっかけにしてほしいと考えている。こうした意識と学び、さらにはこれに裏付けられた自信は、学生たちがITやメディアの領域への就職を目指す際の、後押しにはなるだろう。実はいまだに、自分を「アナログ人間」と位置付け、必修科目の単位が取れると、ネットあるいはPCから離れようとする学生がいる。しかもそういっている学生たちは、必ずしも「アナログ」ではない。こうした学生たちの向学心に対して、少しでも刺激になる枠組になればと思う。

どんな科目があるのか

今年度の段階では、新規開講はほとんどないのだが、現在開講されている科目をまとめただけでも、それなりに充実した科目が並んでいる。

情報処理論1、情報メディア論、情報法が一戸の担当。情報法はビジネス著作権検定に対応して今年実施し、初級については18人受験して14人が合格した。

情報処理論1情報メディア論1は、選択必修の初年次科目だが、ソーシャルメディアの利用を全面的に取り入れ、Twitter、Facebook、ブログを活用して展開している。情報メディア論については、既存メディアを含めたメディア環境の変容について、学生とともに調べて学ぶという授業になっている。これらの科目を通じて、ソーシャルウェブの最新事情について実践的に学び、そのメディア論的な意義について、考えを深めることができる。毎年アップデートし、新しいサービス動向について知り、考えることができる科目は、新潟では他にない(というつもりでやっている)。

情報処理論2は、新潟通信サービスの本間誠治先生が担当。ネットワークの基本について学ぶことができる。

メディア英語は、山崎由紀先生と学ぶ英語ニュースの読み方講座といったところ。単に英語を勉強するというよりは、それぞれのニュースの背景まで掘り下げて学ぶことが求められるだろう。履修条件がついているので、英語レベルの低い学生は受講できないようだが、むしろこれぐらいの英語や国際ニュースを理解できる程度の社会常識は備えてほしいと、情報メディアプログラムの側からもお願いしたいところだ。

視覚芸術論は、写真を用いたアート・プレゼンテーションを実践する。担当は吉原悠博先生。新発田市内の写真館、吉原写真館の館主であるとともに、アーティストとしても幅広く活躍されている。

メディア・コミュニケーション論は、新聞社OBの本間正一郎先生が担当。ニュースをめぐるお話が多いが、既存メディアとネットの融合やその課題といった視点でもお話をされているので、学生たちにも人気がある(というのが、学生たちのTweetからうかがわれる)。
現代メディア論は、高谷先生による映像制作の科目。情報管理基礎論は、清水先生によるウェブサイト制作の科目。ということはそれぞれ昨日のエントリーで紹介したところ。

これらに一戸が担当する演習(ゼミ)と、マイクロソフト オフィス スペシャリスト(MOS)関連の科目を加えたものが、4月からスタートするプログラムの全体像。

今後の拡充構想

さらに今後拡充したいもの。お金に糸目をつけずにやるならば、東京や新潟の魅力的な人たちに来てもらい、いろいろ指導してもらいたいのだが、当面は地元を中心に、選択と集中でプログラムの充実を図っていきたい。

一つは資格関係。決して資格至上主義ではないが、MOSと著作権検定だけではちょっとさみしい。文系の学生でも手が届きそうな資格に対応する講座を、来年度から開講できるよう研究と調整を進めている。もう一つは、「発信力」の強化。映像表現とウェブ制作については、今年から科目や担当者を補強した。写真についても吉原先生の講座がある。あとはウェブで検索し、さらに現地で調査して、ブログにまとめるといった、いわば「デジタルジャーナリズム」の領域がほしい。当面一戸自身も、演習などで取組を強めていくつもりだが、できれば経験豊富な方に指導していただく科目を作りたい。イメージとしては、伊藤穣一さんが慶應でやっていた科目だが、これは大学院の科目なので、もう少しレベルを下げるカスタマイズが必要だろう。あと、インフォグラフィクスのような、ビジュアル化に関連した科目も、教えて下さる方がいれば、ぜひ始めたい。プレゼン資料の作成を含めて、恐らくこれからの学生にはとても大事な能力になるだろう。

このほか、インターンシップやスタディツアーなど、対外的な活動の位置づけ。これはこのプログラムに限らず、現地で経験するプログラムの学部教育への導入は、どこでも課題なのだが、本プログラムでも充実をはかっていきたい項目だ。

さて、プログラムの全体像をざっと説明してきた。もちろん欲を言えばきりがないのだが、少なくとも新潟の私立大学のプログラム、しかも「副専攻」のようなプログラムで、これだけ充実した情報メディア関連のプログラムは、他にはないはずだ。しかも、ソーシャルメディアを軸とする新しいウェブの潮流に掉さした科目を充実させているという点にも、ぜひ注目してほしい。構想どおり今後、統合・調整されたプログラムとして進めることができれば、新潟のITやメディアに関連する領域で、敬和生が幅広く活躍できるようになるだろうし、そうなるよう努力していきたい。

情報メディアとリベラルアーツ

ところで、これらの科目群とリベラルアーツとはどういう関係にあるのだろうか。大量の情報がネットワークで行きかい、人々がつながっていく時代にあって、これとは関係なく、教養教育が成り立つわけはない。ネットワーク以前の環境を生きてきた大人たちはともかく、これからの時代を生きる若者たちにとって、ネットワーク社会に対峙できるだけのITリテラシーは、必ず備えるべき教養といってよいだろう。しかもそれらは、「本の読み方」というような、ある程度固定化したスキルではなく、常に変化する環境の中にある。こうした流動的な環境下にあって、情報流通の仕組みを理解し、そこを行きかう情報を読み解き、自らもさまざまな形式で適切に発信し、他者とつながって活動するということは、まさしく現代のリベラルアーツに求められている、最重要課題だと思う。

とここまで書いてみて思い出したのが、前任校稚内北星の設置に関連して、丸山不二夫先生がよく書いていたフレーズ。当時の文書にはよく、「情報メディア教育は現代のリベラルアーツだ」という趣旨の発言が出てきた。検索したら出てきた。

稚内北星の情報教育が目指してきたこと

今ざっとメディアの歴史を駆け足で追って、電信からはじまって、我が国の25年前の 「超大型コンピューター」までざっとみてきました。僕の大学の情報教育の新しい展望を 語る前に、僕らが、これまでどういう関心をもって情報教育を行ってきたかを話させてください。 僕らは、地方の一短大ですが、「最北端は最先端」をキャッチ・コピーに、先進的な情報教育を 展開をおこない、全国的にも評価を受けるようになりました。 最近は、主に2つの関心がありました。第一は、「現代のリベラル・アーツ」として ネットワーク・リテラシーをきちんと学生に教えたいというものです。第二は、高帯域の ネットワーク・マルチメディア環境をつくるということです。

 

「現代のリベラルアート」を重視

最初の、「現代のリベラルアート」ということでは、次のようなことを考えていました。 まず、ネットワークへの自由なアクセスを、技術と環境の両面で学生に保障するということ です。また、メディアの情報を利用するスキルと、内容的には、それを批判的に受容する スタイルを確立すること。同時に、ネットワーク上で情報発信するスキルを育てること。これは、 煎じ詰めれば単なる技術の問題ではなく、表現すべき自己を確立することが重要だということに 行きつきます。そうして、感性の問題もあります。多様な情報を感性的に統合する技術とスキル を重視すること。僕は、「スキル」という言葉をよく使います。情報教育におけるスキルの 重要さを示す一番いい例が、タイピングのスキルだと思います。僕は、タイピングは、 コンピュータを使いこなす上で、非常に大事だと考えているのですが、そうした理解は、 情報教育の世界では、実践的には、必ずしも十分ではありません。たとえば、いつからタイピング を教えるべきかという問題が、あまり議論されているようには見えません。個人的には、 小学生の高学年から、タイピングの練習は可能だと考えています。

また検索の過程で、長崎県立大学の河又貴洋先生の論文「現代教養学としての「情報メディア学」-高等教育におけるリベラルアーツとしての情報メディア教育に向けて-」が出てきた。これまた大変興味深い。

自分自身は、与えられた現場で、担当した科目についてベストを尽くすという仕事しかしてこなかったので、リベラルアーツの中での情報教育の位置づけについては、それほど深く考えてこなかった。ただ時代が変われば変わるほど、「情報メディア」はリベラルアーツの中核に位置してくるような予感はある。それはもちろん、ツールとしての情報機器の操作自体は、大学教育の中では重視されなくなり、本来的な意味での「リテラシー」教育が、主軸となってくるのかもしれないとは思う。しかし、ハード・ソフトともに日進月歩で動く今日においては、「操作」についての習熟度も人それぞれという面があり、これらを含めた形で、「リテラシー」教育が必要になってくるのかもしれない。

しばらくは試行錯誤というか、方向性を考えながら、「情報メディアプログラム」を構築していくことになる。ともあれ、この領域に関心を持ち、ともに学びを深めるとともに、将来ITやメディア領域で活躍することを目指す学生たちが、一人でも多く集ってくれることを願っている。

敬和学園大学の広報誌「敬和カレッジレポート」に寄稿:新潟のソーシャルメディアと敬和での教育について

フランス出張の前にすでに公開になっていたのだが、告知が遅れてしまった。
敬和学園大学の広報誌「敬和カレッジレポート」の69号に寄稿した。

内容は、2006年から敬和で情報教育を担当するようになって取り組んできたことや、新潟ソーシャルメディアクラブ(NSMC)、新潟フォトウォークなどの「新潟」でのプロジェクトについて。大学での活動については5年半とりくんできて、ようやく大学の広報誌にとりあげてもらえるようになった。実は大変感慨深い。今年もゼミの希望者は伸び悩んだようだし、大学や学科の中で、認知度が高まるまでの道のりはまだまだ長いのだが、「ソーシャルメディアで風通しがよくなった」大学として、その結果みんながハッピーになった大学として、認知度が高まっていくよう、さらに努力を積み重ねていこうと思う。またNSMCやフォトウォークも、同僚の皆さんには、ちんぷんかんぷんの世界なのかもしれないが、それでもとりあえず、自分の活動について知ってもらうきっかけになったとすれば、大変うれしい。

Keiwa Campus Report Vol.69

View more documents from Shinya ICHINOHE.
校正前の原稿なのでひょっとすると中身が少し違うかもしれないが、すでに公表から時間もたったことだし、以下にテキストを貼り付けておこう。

敬和学園大学に「情報」科目の担当として着任して、5年が経ちました。これまでの5年間、前例にとらわれず、変動する情報社会に適応できる学生を育てようと努力してきました。せっかくの機会をいただきましたので、学内外でのソーシャルメディアを利用したこれまでの取り組みを、ご紹介させていただこうと思います。

 

着任当時ネット業界では、「Web 2.0」という言葉がもてはやされ、インターネットは次の時代に向かうという機運にあふれていました。この言葉はあまり使われなくなりましたが、「ソーシャルメディア」という昨今使われ始めた言葉が意味するところもまた、当時言われていたことの発展形といっていいでしょう。情報の送り手と受け手の分断された関係が終わりを告げ、ユーザの活動自体がコンテンツになるという潮流は、今も変わらず、社会の中で進行する現象そのものです。

 

当時新潟には、あるいは敬和学園大学の中でも、新しいウェブの潮流が広がっていく機運は、ほとんどありませんでした。しかし人文系の敬和だからこそ、学生や教職員の活動を支えるような、先進的なネット文化を育てられるのではないか。そう考えた私は、少しずつ新しいウェブの世界を授業の中に取り入れて行きました。残念ながら、当初の学生の反応はあまり芳しくありませんでした。2007年度から一部の授業で学生たちにも教え始めたTwitterは、まだメニュー部分が英語でしたし、学生たちの多くは、授業の後、普段から使っているmixiに戻りました。今思えば不遇の時代でした。

 

この間、私自身はしばしば上京して、ブロガーの集まる各種勉強会やイベントなどに積極的に参加して、進取の精神にあふれた人々にお会いしました。こうした経験の中で、学生がこの流れについてくるまでには少し時間がかかるかもしれないが、まずは新潟県内の社会人を対象に、コミュニティを作ってみようと考えるに至りました。

 

まず手始めに2009年から、当時の2年ゼミ(現4年)の学生たちと「新潟フォトウォーク」をスタートさせました。フォトウォークは、決まったコースをみんなで歩き、それぞれの視点で写真を撮るイベントで、撮った写真をFlickrなどの写真共有サイトにアップロードします。最初のフォトウォークは2009年6月に新潟市の上古町で開催しました。さまざまなサービスを通じて告知をしましたが、最初の参加者は10名でした。その後TwitterやFacebookが新潟でも普及するようになったことで知名度もあがり、徐々に参加者も増えるようになりました。これまで開催したのは、村上、新発田、五頭温泉(阿賀野市)、新潟、燕、田上、栃尾(長岡市)、弥彦、高柳(柏崎)、佐渡。最近は、開催地までの距離にもよりますが、毎回おおよそ30名以上の参加があります。9月に新潟市古町で開催した際には、50名もの参加がありました。

 

新潟フォトウォークで撮られた写真は毎回1000枚以上あり、位置情報のついたデータも多いので、アプリを利用して、iPhoneやiPadで地図からこれらの写真を見ることも可能です。単に写真を撮って歩くというだけでなく、地域の共有データベースを作っていくという「社会貢献」としての要素も、この活動には含まれていると考えています。

 

2009年には、新潟でも徐々にTwitterのユーザが増え始め、こうした人たちがフォトウォークにも参加してくれたり、小規模ながらリアルイベントも開催されたりするようになります。私自身もこのころから少しずつ、各種メディアなどで「Twitterに詳しい」敬和学園大学の教員として登場させていただくようになります(「Twitterに詳しい」という形容は、ちょっと恥ずかしいのですが)。2009年12月には、敬和学園大学のTwitterアカウント @keiwacollege が本格運用となり、大学の広報担当者から、さまざまな情報発信が行われるようになります。

 

こうした機運を受けて、2010年1月29日、新潟のコミュニティ「新潟ソーシャルメディアクラブ」(略称:NSMC)がスタートします。この日の参加者は70人ほど。ちょうどテレビ局もTwitterについて取材していて、この時の様子はテレビで放映されました。NSMCは私を含む7名のスタッフが運営していますが、会員組織を作るわけではなく、毎回オープンに誰でも参加できる形で開催しています。これまで9回のイベントを開催、新潟フォトウォークもNSMC主催として実施していますので、すでに20回以上イベントを、NSMCとして開催していることになります。イベントには、メディアジャーナリストの津田大介さん、ビデオジャーナリストの神田敏晶さん、テーブルマーク広報(当時)の末広栄二さん、アルファブロガーのコグレマサトさん・いしたにまさきさんなどをお招きし、お話をうかがうとともに、さらなる交流につなげてもらっています。私自身、これらの活動を通じて、多くの人々と知り合いになり、新潟県内各地に頼れる友人ができました。

 

NSMCというコミュニティの目的は、孤立する「アーリーアダプタ」(新しいウェブのサービスをいち早く試そうとする人たち)を支援すること。「アーリーアダプタ」の多くは、ネットオタクで話の通じない人たちではなく、むしろ非常にオープンで、コミュニケーション能力も高い人が多いのですが、新潟ではまだまだ少数派です。新しいツールを自社の仕事の中でも積極的に活用しようとして、社内で理解を得られず、苦しんでいる人も多いです。NSMCはこうした人たちをバックアップし、交流するための「場」を提供しつづけたいと思います。

 

ソーシャルメディアが普及する中で、敬和学園大学の中でも学生たちの理解も進み、TwitterやFacebookの利用が広がっています。Twitterは2010年から、必修の情報処理論1(と情報メディア論1)の授業で全員に教えるようになりました。使い方を教えるにとどまらず、「ハッシュタグ」という共通のキーワードを設定して、授業中の情報共有にも活用しています。学生のその場での書き込みをスクリーンに表示しながら進行しますので、講義内容の要約や質問が飛びかうことになります。学生たちも、最初はとまどいますが、みんなで情報を共有することの価値に、徐々に気付いてくれます。授業以外でも、教務課から休講情報が発信されるとともに、その他ささいな相談事も、差しさわりのない範囲でTwitterで共有されています。学生への普及が進んだ結果、広報、入試、就職などの各部門も、学生や地域の皆さんと交流するツールとして、TwitterやFacebookを活用していますし、教員の中にもTwitterやFacebookを使うメンバーが増えてきました。ソーシャルメディアを通じた「風通しの良い」大学が、ますます実現しつつあります。

 

私のゼミ生たちには、Ustreamというインターネット生放送サービスを利用して、お昼休みの生配信番組「Keiwa Lunch」を放送してもらっています。企画からゲストへの出演交渉、当日の進行まで、学生たちに全部自力でやってもらっています。この取り組みは新潟日報でも大きく取り上げていただきました。

 

ゼミ生たちには、新潟ソーシャルメディアクラブのイベントにも、できる限り参加するように指示しています。遠出をしたり、懇親会に出るのにはお金がかかるのですが、それ以上に得るものも多いと思います。県内各地の商工会議所などのTwitter・Facebook講習会に、私が講師としてうかがう際にも、できるだけ学生たちをアシスタントとして連れて行き、社会人のソーシャルメディアへの関心を、肌で感じてもらうようにしています。

 

これらの取組みは、「ネットに強い学生を育てる」という単純な意味で行っているものではありません。社会のあり方が変わり、一人一人が組織を離れても生きていける力が求められる中で、自ら発信し、人々とつながっていく力のある学生を育てていこうというのが、本当の狙いです。その上で大学では、検索エンジンで調べればわかることを教えるのではなく、その先を学生と教員が一緒に切り開いていく教育を、行う必要があると考えています。

 

ソーシャルメディアを利用した「風通しのよい」環境づくりは、敬和の掲げるリベラルアーツ教育の、本質の一部です「敬和カレッジ・レポート」の読者の皆さんとも、TwitterやFacebookでますますつながりや共感を深め、協力関係を深められるようになりたいと思います。

20080619 Green Wall

情報ネットワーク法学会第11回研究大会:参加申込受付中

10月15日、北海道大学で開催される、情報ネットワーク法学会の今年度の研究大会、個別報告のプログラムが固まり、参加申し込みの受け付けが始まっている。
20080619 Green Wall

Photo by BONGURI

続きを読む

情報ネットワーク法学会第11回研究大会:北海道大学で10/15開催

情報ネットワーク法学会の今年度の研究大会、プログラムが発表になった。
開催校は北海道大学で、10月15日の開催。個別報告・ポスターセッションの申し込みは、8月28日まで受け付けている。
確定した午後のプログラムは以下の通り。
情報ネットワーク法学会

●基調講演
基調講演1「社会保障・税番号制度と番号法案」
  浅岡 孝充氏(内閣官房社会保障改革担当室参事官補佐)
基調講演2「震災復興とICT(情報通信技術)」
  谷脇 康彦氏(総務省大臣官房企画課長)
○休憩
 休憩会場でポスターセッションにご参加ください。
●分科会
 2つの分科会を平行して開催します。どの分科会のコマにも参加可能・途中移動可能です。
第1分科会
・テーマ「社会保障・税番号(マイナンバー)制度の意義と課題」
 発表
  浅岡 孝充氏(内閣官房社会保障改革担当室参事官補佐)
  石井 夏生利氏(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科准教授)
  新保 史生氏(慶應義塾大学総合政策学部准教授)
  高木 浩光氏(産業技術総合研究所 主任研究員)
 司会
  鈴木 正朝会員(新潟大学法科大学院 教授)
第2分科会
・テーマ「大震災とソーシャルメディア:その意義と課題」
 発表
  小林 啓倫氏((株)日立コンサルティング コンサルタント)
  西條 剛央氏(早稲田大学MBA専任講師、ふんばろう東日本支援プロジェクト代表)
  谷脇 康彦氏(総務省大臣官房企画課長)
  藤代 裕之氏(ジャーナリスト)
 司会
  一戸 信哉会員(学会理事・敬和学園大学人文学部准教授)

第二分科会の企画を担当させていただき、司会をやらせていただくことになった。「震災とソーシャルメディア」というテーマは、この半年、いくつもシンポジウムで取り上げられてきた。情報ネットワーク法学会でも5月の特別講演会で取り上げた。今回はその続編としての位置づけで、パネラーもかなり入れ替わった形で、切りこんでみることにした。行政から総務省の谷脇さん、現場に近いプロジェクトから「ふんばろう東日本」の西條さんに入っていただくほか、最近このテーマで本を出された小林啓倫さんにもご参加いただけることになった。そして前回に引き続き、「ガ島通信」」の藤代さんにも入っていただいくことにした。
一方の第一分科会。私は聞きに行けないのだが、こちらは新潟大学の鈴木先生のアレンジ。番号制度問題について、制度設計に関わった浅岡さんを迎え、おなじみ産総研の高木さん、筑波の石井先生、慶應義塾の新保先生と、こちらも論客がそろった。
秋の札幌にて、皆さんにお会いできるのを楽しみにしております。

Twitterによる大学授業ノートプロジェクト sfcnoteと敬和で使うハッシュタグ

授業でハッシュタグを使う試みは、前期から@taromatsumura さんや僕が、いくつかの実験をしてみていたのだが、慶応SFCでは学生プロジェクトとして、Twitterによる大学授業ノートプロジェクトが始まったようだ。こういうプロジェクトを学生たちが起こしてしまうというのが、SFCという磁場の強さということなのだろう。

リンク: Geekなぺーじ : Twitterで大学授業ノートプロジェクト sfcnote が斬新過ぎる.

sfcnoteは、SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)の教室を舞台としつつ、Twitter上で議論を活発化させ、さらには授業ノートとしてまとめてしまおうという実験プロジェクトのようです。 大学の各教室名と同じハッシュタグがあらかじめ用意されています。

続きを読む

嘉悦大学の情報メディア論 @class_infomedia

松村太郎さんが、今年から担当されている嘉悦大学の情報メディア論について書いている。@class_infomedia(授業用のTwiccoアカウント)を用いつつ、「「出欠」「授業中のインタラクション」「課題提出」に至るまで、全てをTwitterをインフラとして行」っているそうだ。

リンク: TAROSITE.NET: Twitterで大学の授業をやってみる – 嘉悦大学情報メディア論 @class_infomedia.

ここは議論すべき点だけれど、僕は別に課題を学生と授業担当者の間での秘密にする必要もなく、またリアルな教室内だけの発言にとどめる必要もないと思っている。もちろん、インターネット上に課題を公開しながら進めます、という前提を初回の授業で説明しているのだが、教室にいる他の学生やネット上に出して恥ずかしくない答えを、僕にも提出して欲しい、と言う思いもあるので。

続きを読む

授業開始:KMD Digital Journalism(慶応義塾大学のデジタルジャーナリズム講座)のシラバスを読む

今週から敬和での授業がスタートした。
本当は先週金曜からだが、僕の担当分は今日から。

今日は3,4年のゼミと情報メディア論。
ゼミには新メンバーの加入があったので、どちらの時間も、ブログ、Twitter、Friendfeedの基本的な設定をしているうちに、時間が終わった。

ソーシャルメディアを使いこなし、自らも情報発信をしながら、既存ジャーナリズムへのソーシャルメディアのインパクトや制度的な課題について考える。3,4年でそこまでいけるように努力しているのだけれども、これまでのゼミは留学生が多く言葉の課題もあり、なかなか難しい年が続いた。今年の2年生は意識の高い学生が多いように感じるので、少し雰囲気が変わるだろうか。

ちょっと前にTwitterで流れていた、慶応情報メディア研究科での「デジタルジャーナリズム」のシラバスのことを思い出し、授業開始に合わせて、ざっと読んでみた。担当はJoiさん。

リンク: Summary and Links ‎(KMD Digital Journalism 2009)‎.

続きを読む