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学生が運営を支えるなとり災害FM「なとらじ801」

くびき野メディフェス2日目は、臨時災害FMについてのセッションに出席した。東日本大震災以後に東北地方でスタートした臨時災害放送局は多数あるが、登米、山元、名取、南相馬の局からパネラーが登壇した。

<災害を超えて日常を支える持続可能なコミュニティー放送のあり方とは?>
東日本大震災被災地のコミュニティー放送や継続して地域に根ざしてゆこうとする臨時災害FM局、早くから救援に入った被災地外のFM局の関係者が経験を持ち寄り、災害時と日常を支えるラジオの在り方を検討します。

大久保 良  なとらじ(名取市臨時災害FM局)
今野 聡   南相馬ひばりエフエム(南相馬市臨時災害FM局)         
斉藤恵一   H@!FM(はっとエフエム)(株)(登米コミュニティエフエム)
高橋 厚   りんごラジオ(山元町臨時災害FM局)
日比野純一 (特)FMわいわい(神戸市長田区)(インドネシアから中継)
脇屋健介   FMながおか(株) (新潟県長岡市)
コメンテーター 金山智子  (情報科学芸術大学院大学)
コーディネーター  松浦さと子   (龍谷大学政策学部)

りんごラジオの高橋さんには、昨年、情報ネットワーク法学会特別講演会で、電話で出演していただいた。音声の品質が維持できずに申し訳なかったが、情報から隔絶された山元町に、どのようにしてラジオをスタートさせたか、非常に興味深いお話をうかがうことができた。今回はクリアな音声で、生でお話をきくことができた。

高橋さんと40以上年下という大久保さんは、なとり災害FMのな「なとらじ」を運営しているのだが、実は名取市の大学生だった。1日目、私たちの「ソーシャルメディア」分科会にも出席していたが、てっきり聴衆で参加している普通の大学生だと思っていた。大学生ではあったが、実は臨時災害放送局を代表してお話するパネラーだった。現在なとり災害FMは名取市から委託を受けて、NPO法人が運営しているのだが、常勤は1名。残りの運営スタッフの多くが大学生で、午前は大学、午後は放送、というような生活を送っているという。

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なとり災害FM なとらじ801のブログ

なとり災害fm なとらじ801(Facebookページ)

なとり災害FM ”なとらじ801” (fm_natori801mhz)さんはTwitterを使っています

コミュニティFM関連のシンポジウムでは、ネットを含めた新しい環境下で、ラジオの機能を誰がどのように担うかという話はあまり出てこない。たいていの場合、みんなラジオに愛着があり、同じ機能がネットによって担われるということについては、(テレビの人ほどではないが)あまり関心がなく、ある意味補完的な役割しか見出していないことが多い。もちろんラジオ局の運営においては、さまざまなプロのノウハウが必要だと思うが、ラジオは伝達手段の一つであり、他の手段との組み合わせで、とにかく必要な人に情報が届けばいいはず。また、ラジオとネットを連動させることで、新しい面白さも見つかるはずだ。しかし人員の少ない小さなFM局では、なかなかそれを実現するだけの余裕もないのだろう。

この点、今日の大久保さんはなかなか斬新であった。
ラジオを持っている事自体が大事なのではなく、コミュニティが大事。NPO法人化することで、今後どうするのか、みんなで決めることができるようになった。その先はラジオという形ではないかもしれない。という発言。前日の「ソーシャルメディア」分科会に引き続き、「コミュニティ」が大事というキーワードが出てきた。臨時災害FMが、コミュニティFMになるのかどうかは、営業的な問題がリアルにあるだろうし、そのためにはまず、「コミュニティ」の中でラジオ局が根付いているかどうかにかかっているのだろう。もし今後の自律的運営が難しい場合には、閉局して、別の方法で情報が循環すればよいということになる。この点は、大槌みらい新聞の「引き際」に言及した、藤代さんの影響があったかもしれない。
制度的にも、市民の声を拾う方法は多様に用意されている今、番組審議委員会を開催することはそんなに重要ではない。またラジオ局の開設についても、臨時災害やコミュニティ以外の免許があってもよいという話題も出た。なんらかの「交通整理」が必要であるにせよ、ラジオ局の設置理由はもう少しいろいろな可能性があるわけで、ネットではなく電波である意義があるのであれば、積極的に認めていくという可能性も、たしかにあるように思う(実際臨時災害放送局も、安定的に継続しているものだけではなく、すでに閉局してしまったものもある)。

何はともあれ、学生たちが番組を持つのではなく、局を運営しているというのは、初めて聞いた。もちろん学生「だけ」ではないのだろうけれど、震災後の非常事態を支えるべく、学生たちが献身的に局の運営を支えてきたという構図だ。今日のセッションでは、どこの臨時災害FMも運営は苦しく、給料も十分には払えないという話が出ていた。その中で、スタッフたちの使命感が、局の運営を支えているということだろうし、面的に局の運営をカバーするためには、学生が学業を犠牲にしなければならない場面もあるかもしれない。

非常に興味深いケースであった。ラジオ番組をやっているメンバーを含めて、一度学生たちをつれて、なとらじに行ってみたいと考え始めている。

2012

コミュニティに根ざしたメディアの作り方:「くびき野メディフェス 2012」の「ソーシャルメディア」分科会開催

10月27日、上越市で開催された「くびき野メディフェス 2012」にて、分科会「地域メディアとしてのソーシャルメディアの可能性」を実施してきた。企画は新潟ソーシャルメディアクラブで、登壇者は、藤代裕之さんと加藤雅一さんと一戸。ご参加いただいた皆さん、どうもありがとうございました。

第10回市民メディア全国交流集会 公式サイトへようこそ

15時半からのセッションに向けて、14時過ぎに登壇者が集まり、打ち合わせ。加藤さんから「新潟美少女図鑑」が地域メディアとしてできあがるまで、また、そのコンセプトについてのお話があり、これに藤代さんが賛同。「ソーシャルメディア」よりも「地域メディア」を中心に展開しようという話に。「ソーシャルメディア」の話題とどのようにリンクさせるか、モデレータの自分としては、考えをめぐらせながらのスタートとなった。

2012

くびき野メディフェス 2012

NSMCの活動内容について一戸が説明した後、加藤さんからテクスファームや「新潟美少女図鑑」について、藤代さんから「大槌みらい新聞」についてのプレゼン。「新潟美少女図鑑」は、「女の子のメディア」というコンセプトで、「もうけ」に走らず、品を保った冊子を作り続けることで、新潟の「おしゃれコミュニティ」に支持されてきたという話。「新潟のために」とか「地域活性化」というような、大げさなキーワードではなく、そこにあるコミュニティ、そこにいる人達に支持されるコンテンツを作り続けたことで、結果的に「地域メディア」として認知されるようになったという。

この点は、「大槌みらい新聞」も同じ。当初大槌に入った際には、紙とソーシャルを組みあわせた「ハイブリッド型」のメディアということを考えていた。しかし大槌の人々の情報環境を調べた結果、現在は町の人々に通じる紙での情報配信を最優先にする方向に舵を切った。また内容も、硬軟とりまぜつつ、文体などディテールにもこだわって、メディアを失った街で、人々に支持される新しいメディア作りを目指しているという。仮設での「お茶っこ」(茶話会)に参加させてもらうことで、少しずつ「よそ者」がコミュニティの理解を得て、実態を知りながら、取材を進めている。また同時に、町の人々の情報発信力を高めて、協力者になってもらうための取り組みも行なっている。

大槌みらい新聞 | 未来のために今日を記録する

お二人のお話に共通するのは、そこにあるコミュニティからスタートしていること。またコミュニティに支持されるために、コンテンツのディテールにかなりこだわりを持って、チューニングしている点も共通していた。新潟のアーリーアダプタを接続し、そこに新しいコミュニティをスタートさせたNSMCも、ある意味コミュニティに根ざしてはいる。しかし、新潟の一般的なネットユーザの実態とは関係ない人たちを、人為的につなげたという点では、やや趣が異なっている。もちろん今の「アーリーアダプタ」コミュニティの存在意義もあるとは思うのだが、一方で、「普通のネットユーザ」「普通の人々」との接点をどのように探していくべきなのかは、NSMCにとって大きな課題だ。その点でも考えさせられる問題提起であった。

コミュニティに根ざしたメディアを作るという意味では、地域SNSも同じ路線なのだが、こちらはうまくいっているとはいえない。実はコミュニティに根ざしたメディアは必要かもしれないが、コミュニティに根ざしたSNSは、そんなに求められてはいないのかもしれないし、何かリアルなコミュニケーションに補完・代替する何かが、足りないのかもしれない。この点も少し問題提起したが、時間切れとなった。

地域メディア関係者からは、営業的な観点からの質問が出た。小さなコミュニティで広告をとって存続させていくのは大変だが、ソーシャルメディアをつかった新しいアプローチの可能性はあるかと。「新潟美少女図鑑」には「スポンサー」という概念はなく、「運営協力」という形をとっていて、ドギツイ広告は載せず、全体のコンテンツの品位を維持しているという。そのため、知名度ほどには儲かってはいないが、そこでの実績から、別のところでの仕事につながっている。この「やせがまん」を地域メディア一般にあてはめるのはちょっと酷な気もするが、一つのヒントにはなっているかもしれない。「大槌みらい新聞」は、このプロジェクトそれ自体への支持によって、Ready forを通じた資金集めに成功している。プロセスを開示しながらファンを作っているという考え方は、コンテンツに値付けする従来のメディアにはなかった発想だろう。もちろんコンテンツをおろそかにしてよいわけではないが、コンテンツの対価としてお金をいただくというモデルだけでは、なかなか先は見えない状況にある。地域メディアについては、プロセスそれ自体の価値に対して、お金が集まる可能性があるのではないかと。もちろん誰もがみんなこのモデルに乗っかれるとは思えないが、これもまた一つのモデルにはなりうるように感じた。

結局「ソーシャルメディア」というツールよりも、コンテンツの作り手や編集者の役割に焦点があたるセッションとなった。最初に紹介したNSMCの活動と、その後のお二人の話を噛み合わせるのはなかなか大変だったが、NSMCの活動に関心を持っていただいた方もいらっしゃったようで、そちらについても成果があったと思う。交流会には遅れていったのだが、上越の方、新潟の方、全国から集まってきた方、いろんな方とお話ができた。

関連のTweetをTogetterにまとめておいた。

くびき野メディフェス 2012分科会「地域メディアとしてのソーシャルメディアの可能性」 – Togetter

SAKE

10/27「くびき野メディフェス 2012」に登壇予定:藤代裕之さん、加藤雅一さんとともに、テーマは「地域メディアとしてのソーシャルメディア」

10/27-28に上越市で開催される「くびき野メディフェス2012」、27日午後の分科会をやらせてもらうことになった。もともと新潟市内でやったら結構お客さんがくるかなと思っていた企画を、たまたま上越で大きなイベント「くびき野メディフェス」があるというので、こちらに持ってきたという内容。ただ分科会は同時間帯にいろいろな企画がならんでいるので、やや心もとないので、皆さんのご参加と告知への協力をよろしくお願いします。

上越くびき野みんなのテレビ局-分科会の紹介

【2】 タイトル <地域メディアとしてのソーシャルメディアの可能性>

TwitterやFacebookなど、リアルタイム性と拡散力を備えたソーシャルメディアは、今日、世界各地で社会変革をもたらす大きな影響力を持つまでに成長している。一方日本国内でも、ソーシャルメディアユーザーは着実に増加しているが、依然都市に偏っている。地方でもユーザーは増えつつもあるものの、都市との間にギャップがある感は否めない。

ソーシャルメディアは今後「地域メディア」として、都市以外でも発展していく可能性はあるだろうか。 もし可能性があるとすれば、それはどんなメリットを、地域社会にもたらすだろうか。フリーペーパー「新潟美少女図鑑」を起点として活動する加藤、メディアとジャーナリズムの未来に提言を続けるとともに、岩手県大槌町で新たな地域メディアへの取り組みをスタートさせた藤代、新潟のソーシャルメディアコミュニティの育成に関わる一戸、三人の実践報告を中心に、地域メディアとしてのソーシャルメディアの可能性を模索する。

出演者
一戸信哉 (敬和学園大学人文学部准教授)
加藤雅一 (テクスファーム プロデューサー)
藤代裕之 (早稲田大学非常勤講師/JECJ代表運営委員)

担当者
一戸信哉 (敬和学園大学人文学部准教授)
日時     10月27日(土)  15:30 ~ 17:30
会場     高田駅前コミュニティルーム

藤代裕之さんは、ブロガーとして、さまざまな媒体での発言を続けているが、最近は大槌町での「NewsLabおおつち」での新しいメディア作りで活躍されている。実はこの企画、大槌での活動がここまで話題を呼ぶ前に作ってあったのだが、その後「大槌みらい新聞」の発行スタートとともに、にわかに脚光を浴びつつある。「地域メディア」を考える格好の事例報告になるだろう。

NewsLabおおつち

ガ島通信

加藤雅一さんは、「新潟美少女図鑑」を制作するテクスファームの中心人物。すぐになくなる高品質のフリーペーパー「新潟美少女図鑑」をはじめ、斬新な企画で「地方のブランド化」に取り組んできた経験から、これからの「地方メディア」を語ってもらう予定。

株式会社テクスファーム|TEXFARM

フリーペーパー[新潟美少女図鑑]

一戸からは、新潟ソーシャルメディアクラブの活動実績(NSMC)とこれからの方向性についてお話させていただく予定。NSMCの活動について上越でお話するのは初めてのことなので、ぜひ多くの方にお会いしたいと思う。

フリーペーパー[新潟美少女図鑑]

くびき野メディフェスと同時開催で、上越市内では、越後・謙信SAKEまつりも開催されている。こちらもあわせてお楽しみいただきたい。

越後・謙信SAKEまつり

SAKE

「大槌みらい新聞」、創刊準備号が発行された

「NewsLab♡おおつち」の大槌みらい新聞。創刊準備号が発行された。

大槌みらい新聞 | 未来のために今日を記録する

このプロジェクトは、情報発信による地域支援プロジェクト。東日本大震災で地元新聞「岩手東海新聞」が廃刊した岩手県大槌町で、地域メディアの立ち上げと、住民向けの発信力強化のワークショップなどを実施する。実施しているのは、日本ジャーナリスト教育センターNPO法人ボランティアインフォ。大槌町や地元NPO、商店街の協力を得て運営している。

今回発行された創刊号では、夏の甲子園の始球式で捕手をつとめた大槌高校3年生の金野利也さんのインタビューがトップ記事になっている。未来への希望を感じさせる明るい紙面構成だ。

「本当に幸せな瞬間でした」甲子園の始球式で捕手 大槌高3年金野利也さん | 大槌みらい新聞

編集部は、元茨城新聞の松本裕樹さんがリードし、学生インターンが現場で取材活動している。学生インターンの募集には、多くの学生からの応募があったようだ。拠点となっているのは、ボランティア宿泊施設「大槌きらりベース」。大槌北小学校の施設内。小学校の校庭に仮設商店街「大槌福幸きらり昇天がい」がオープンしており、これに隣接した宿泊施設内に間借りしている。地域メディアが失われた町で、一からメディアを作り上げていくという経験は、学生にとっても(いや学生でなくとも)、非常に貴重な経験になるはずだし、地域にとっても非常に重要な仕事だ。新聞は紙で地元に配布すると共に、ウェブでも公開される。紙かネットかという話ではなく、地元の人のためのメディアであるとともに、忘れ去られていく被災地の「今」を、外の人たちに伝えていく重要なメディアとなるだろう。

「NewsLab♡おおつち」のFacebookページでは、取材中の情報も掲載するなど、これからの展開を予測させるような作りになっており、リソースに限りがある(と思われる)プロジェクトなのに、ウェブの利用の仕方は新しいメディアのあり方を予感させる斬新なスタイルだ。

NewsLabおおつち

8月18日には、東京都内でJCEJ主催のワークショップが予定されている。

ワークショップ「みんなで考える、東京から被災地大槌へ伝わるニュース」を開催します。 – 日本ジャーナリスト教育センター / Japan Center of Education for Journalist

また、クラウドファンディングの「Ready for」において、目標金額150万円の支援募集も行われている。

津波被害で「沈黙した町」岩手県大槌に地域メディアを創る(松本 裕樹)創刊準備号発行しサイトも開設 – READYFOR?

以下はIT Proの記事。

ニュース – 被災地の情報をWeb・ソーシャル・紙で発信する「NewsLabおおつち」が始動:ITpro