弘前ねぷたと土手町が登場するMV「LOVE&SOLDIER 」RINGOMUSUME(りんご娘)


2020年9月16日、りんご娘が新曲「LOVE&SOLDIER」のMVをYouTubeで公開しました。9月23日発売の20周年記念アルバムに収録される曲で、2000年に発売した最初のシングル曲をリアレンジしたものだそうです。

🍭 RINGOMUSUME(りんご娘)、「LOVE&SOLDIER」MV公開! 20年前のデビュー曲をリアレンジ – Pop’n’Roll(ポップンロール)

RINGOMUSUMEの地元・青森県弘前市のメインストリートである土手町商店街を舞台に、方言・津軽弁のほか、弘前の地名や風習、伝統的な夏祭り<ねぷた祭り>などの言葉を歌詞に織り込んでいる。

同曲のMVは、夜の繁華街として栄えた平成初期の土手町商店街が舞台。楽曲の世界観をそのままに、RINGOMUSUMEたちが夜の土手町を“土手ぶら”(土手町をぶらぶらと歩くこと)しながら、フィナーレでは“恋の出陣”のシンボルとして、勇ましい武者絵の“ねぷた”を引き連れながら練り歩くストーリーに。“じょっぱり”とも呼ばれる津軽気質の芯の強さや力強い津軽の女性を表現している。

撮影はロケ地である中土手町商店街振興組合をはじめ、地域の各機関全面協力のもと、土手町商店街の一部区間を車両通行止めにして実施。

ネオンや照明でライトアップされ、クラシックカーが停まるギラギラした土手町を背景に、土手ぶらを楽しむメンバーが注目ポイントだ。

土手町は、ショッピングの街

撮影地の中土手町は、私の父の実家である一戸時計店(現在営業していない)のあるエリア。子供の頃よく遊んでいた場所です。土手町が「夜の繁華街」として栄えたというのは、ちょっと違っていて、たしかに土手町に近い鍛冶町というエリアは歓楽街ですが、土手町自体はどちらかといえば、以前から昼間のショッピングの街でした。「土手ぶら」というのが実際使われていた言葉なのか、実はよくわからないですが、子供の頃ワクワク感のある賑わいのある商店街だったのはたしかで、「銀ぶら」に相当するような意味で「土手ぶら」という言葉が使われていたのかもしれません。

現在の土手町は、すっかり活気を失ってしまった中心市街地といっても、あまり反論はないだろうと思います。そこでご当地アイドルのりんご娘がが華やかに踊って歌うことには、大きな意味があると思います。全国のファンは中心市街地を訪れるでしょうし、弘前市民はこの街に愛着を持つことでしょう。昨年、弘前中三で撮影した「Ringo Disco」と同じような意味合いがありそうです。

弘前中三を再び輝かせるRINGOMUSUME(りんご娘)「Ringo Disco」 | ICHINOHE Blog

8月にりんごミュージックから「観覧自粛」のお願いが出て、すでに交通規制の場所が示されていたので、一戸時計店が撮影エリアに入っていることもわかっていました。ひょっとして写っているかと、個人的に期待はしていたのですが、残念ながら時計台が映り込むような作品ではありませんでした。

【観覧自粛のお願い】土手町での撮影について | RINGOMUSUME|りんご娘 公式ウェブサイト

2020年中止となった「弘前ねぷた」が背景に登場

通りを通行止めにして背景に登場したのは、お店ではなく、ギラギラ感のあるクラシックカーと今年中止となった弘前ねぷたでした。土手町は、ねぷた祭り前半の運行コースで、普段とは違い、まつり期間中は今でもたくさんの人々が集まる場所です。そこでねぷたをバックにりんご娘が踊って歌うというのは、ねぷた祭りを諦めざるをえなかった弘前の人々に、大きな励みとなる映像になるでしょう(実家の居間(のようなところ)で普段着でテレビを見ているメンバーの様子もまた、津軽の夏休みらしく見えてきます)

ねぷたのシーンで、後ろに出ているエキストラの人達がきている浴衣は、中土手町のねぷたのものが使われています。

津軽弁の恋愛フレーズ(?)がいくつも登場

青森生まれの私からすれば、解説は必要ないぐらい平易な津軽弁で歌われていますが、解説しておきましょう(正確さには自信ないですが)。恋愛というか男女のやり取りに出てきそうなフレーズを集めています。

「わばなばすきだ」:「わ」が私、「な」があなたなので、つまりは「I love you」ということですね。主語のあとに「ば」が入る用法は、あまり私はつかいません(通常は「わはなば」「わなば」となる)が、使っている人はいるような気がします。棟方志功は「わだばゴッホさなる」と高い志を語ったとされていますが、この「わだば」も「わたしならば」という意味ではないようで、この歌の「わば」と同じような使い方なのでしょう。

「どさゆさいぐが」:「どさ」が「どちらへ」、「ゆさ」が「お風呂へ」という意味で、津軽弁会話の短さを象徴するネタ的な会話例としてよく出てきます。ここは歌詞の中に無理やり入れただけで、「どさゆさいぐが」とはいわないと思います。「どさいぐが、ゆさいぐが」=「どこいく?温泉いく?」というような会話はありえますが。まあでも意味的には「どこいく?」ってことでしょうね。

「ワノドサコイジャ」:「ワ」は私で、「ド」は「ところ」、「サ」が「へ」で、「ワノドサ」というのは、「わたしのところへ」ということになります。直訳すると「わたしのところへおいで」ということになります。そして女性は「イヤイヤヨ」と拒否する。互いに見える範囲にいて「こっちへおいで」といっているのか、電話などで「うちに遊びにおいで」といっているのか、どっちでしょうね。いずれにしても男女のやりとりに頻出のフレーズということになります。

「わいは」:これは歌詞に入っていませんが、後半出てきます。津軽の人、特に女性がよく使う感嘆詞です。通常は、単純に「驚き」を表しますが、「ありえない」「あきれた」というニュアンスを含むことがもあります。個人的な印象でいうと、男性は「わいは」よりも「わい」を同じ意味で使うことが多いです。「わい」は男女とも使えます。

というあたりがわかれば、この歌の中身はだいたいわかるかと思います。

ねぶたとねぷた

「ねぶたは恋の祭りなの」と「ねぷたは夢の祭りなの」という歌詞があります。青森が「ねぶた」、弘前が「ねぷた」という呼称を用いて、棲み分けているのにおそらく対応していて、どちらにも配慮した歌詞ですね。この2つの名称は、単なる棲み分けのようで、昨年発行された弘前観光コンベンション協会「弘前ねぷた本」によると、昭和32年に「ぶれ」のあった名前を「弘前ねぷたまつり」とし、翌年青森では「青森港祭り」と呼んでいたものを「青森ねぶた祭」にしたそうです。つまりもともとはどっちも同じものなのですが、それぞれの地域性や歴史的経緯があり、若干違うスタイルの祭りになっているということなのでしょう。

歌の後半、ねぷたの前で踊るシーンに出てくる「ネプタノモンドリコ ヤーヤドー ヤレヤレヤレヤ」「モンドリコ」というのは、弘前ねぷたで使われるフレーズです。「ヤーヤドー」以外は「もどり」のときのフレーズです。かつてねぷたは町内ごとに出陣して街を練り歩き、他の街と遭遇すると喧嘩していたといいますが、喧嘩に帰って「凱旋」するときのものだったのかもしれません。今は喧嘩しませんが、合同運行で表通りを練り歩くときではなく、自分の街に戻っていくときに、「もどり」に切り替えているようです。したがって知らないと気がつかないかもしれません。

ご当地アイドルが引っ張り上げる、地方都市のイメージ

ご当地アイドルのMVは、どんどんクオリティがあがっていて、「え、これがうちの地元?」と地元民が思ってしまうほどの出来栄えになっています。少なくともりんご娘とNegicco、NGT48、Ryutist、青森と新潟、私の関わりある地域のご当地アイドルは、それぞれの街のイメージを「やりすぎ」といわれかなねいほどに引き上げる映像を作っています。

「きらびやかさ」で都会と競い合ってもしょうがないのですが、ある種の「標準」を備えたコンテンツを打ち出すことで、もともと持っていた地域の「魅力」が輝くことはありえます。弘前という街は、歴史文化の蓄積のある城下町で、観光客も多く訪れるところですが、それゆえに城下町にありがちな保守的な気風が強く、変化しきれない難しさを抱えているともききます。その中でりんごミュージックは、20年間挑戦を続けてきて、「りんご娘」というブランドを作り上げました。最近はメンバーが、テレビの全国放送に登場することも多いようです。東京に「つまみ食い」されて、飽きられるという点にも注意して、適度な距離を保ちつつ、青森から光を放っているようにみえます。

「りんご娘」を契機として、注目されてこなかった弘前の文化に光があたり、地元もまた単なる「おらが村自慢」を脱却することができるならば、土手町も弘前ねぷたもかつての輝きを取り戻せるかもしれない。今回の映像をみながら、あらためてそんな印象を持ちました。

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