Wikipediaでの「学び」を共有するアプリ「goocus」

Goocus

 

ソーシャルラーニング・サービスを提供するキャスタリアが、新しいアプリケーション「goocus(グーカス」を発表した。iPhoneとAndroidアプリとして提供される。地味ながら面白いことに、公式サイトはTumblrで作られている。

Wikipediaでソーシャル「ラーニング」を実現する

Wikipediaと教育界の人々との相性は、今のところ正直あまりよくない。学生がコピペレポートを作成する一番のソースであることや、ソースがはっきりしない情報が多いことから、あからさまに「あんないいかげんなもの」と否定的な態度をとる教員も多い。しかし、いい加減な内容の場合もあると割り引いたうえで、中身を検証して利用するという留保をつけるにせよ、私たちの日常は、すっかりWikipediaに頼るようになっている。日常生活の中では、「ちょっとわからなかったこと」を検索するという、意思と能力がある人ならば、Wikipediaにたどりつく人は多いはず。博覧強記で、なんでもすぐに自分の頭の中を検索できるような人でない限りは、そのように「すぐに検索する」という態度は、むしろ推奨されるべきではないかと、正直思う。少なくとも、知らないことを知らないままにして、文脈をすっ飛ばして自分の言いたいことだけいうような態度よりは、よっぽどましだろう。

さてgoocusは、この問題に答えている。アプリを使ってWikipediaを検索し、その履歴を友達と共有するのだ。みんなのちょっとした「探究心」が力を合わせれば、集合知たるWikipediaをソーシャルで共有し、再びブラッシュアップした集合知にする。

何回か試してみたが、アプリ上でWikipediaを検索すると、その履歴は友達と共有されているようだ。また「学んだ」というボタンがついているのだが、これを押したものが共有されるということだろうか。設定の中に「検索履歴をシェア」という項目があり、これにチェックを入れた場合には、「学んだ」を押す前の検索履歴も、友人と共有されるということだろうか?(この辺がまだよくわかっていない)

ふせんで「気付き」を共有

どんな項目を検索して発見したか。これを友人と共有するだけでも面白いはず。大学の授業などで、わからない項目が出てきたら、誰かが調べて、その履歴を共有するという使い方もできるだろう。

しかしさらに面白いのは、調べた結果でてきた項目に「ふせん」という形でコメントをつけられるところ。

Goocus

Wikipediaの内容と先生の話はちょっと違っていて、それを比較検証した結果を共有するなど、単純に検索するだけでなく、コメントをつける形で情報を共有できる。Youtubeでいうところのアノテーションだし、ニコ動のコメントでもあるが、元のWikipediaのデータに手を加えるわけではなく、あくまでこのサービスの中での情報共有だ。

このほかに、「人々」という項目もあり、同じ項目を見たユーザの一覧も表示される。

Goocus

Facebookと連携

共有する「友達」は、ユーザ名で検索することが可能だが、Facebookと連携させると、Facebookの友人はサジェストされるようになっている。

またFacebookと連携することにより、「学んだ」ボタンを押した項目が、Facebookの自分のウォールにも投稿される。

今いる場所に関係する項目を検索

もう一つ面白いのが「現在地で探す」機能。たしかに旅先など、あまり土地勘のない場所で、見かけたものについて検索することはある。それを位置情報を使って自動化しようというわけだ。

デモ動画があった。

新潟市中心部では、こんな項目が出てくる。

Goocus

位置情報にもとづいて、Wikipediaで「今知りたいこと」が的確に出てくるかというと、そうすんなりとはいかない気もするが、それぞれのユーザのコンテキストにあわせて、適切な情報が表示されるというのは、面白いアイデアだ。遠足で行った先の情報を調べるなんていうのも面白いかも(小学生には無理かもしれないが、高校生ならば)。

アプリだけで提供

ともあれ、どんな項目を検索しているのかを共有するのは、なんとなくこわい。Googleでの検索結果それ自体が、いつのまにか共有されていたらと考えると、非常に気味が悪い。この点でgoocusは微妙なバランスの上に乗っかっていて、Wikipediaを検索して共有するためのアプリを利用して、最初から共有することを意図して利用する形式をとっている。したがって、こっそり「ムフフ」な検索をしたい場合には、このアプリをユーザは使わないだろう。非常にスマートな解決方法といえる。

「ふせん」の発展に期待

今後発展が期待されるとすれば、一つはコンテキスト検索。位置情報だけでなく、音、時間、気温その他のコンテキストから、、、どうすればいいのかな。まあ位置情報以外の要素も考慮した情報というのは他にもありそう。だが音声以外は時間がかかるか。もう一つは、「ふせん」。現在はWikipediaの項目ごとにしかふせんをつけられないが、本当は項目の中の特定部分にだけコメントしたいという需要はあるはず。そうなればgoocusでのソーシャルラーニングはさらに進化し、教室の中で他のメンバーの「ふせん」を見ながら学べるようになるはずだ。こちらはスマホで十分な操作性を実現できるかはわからないけれども、おそらく改善課題には入っているのではないか。今後に期待したい。

最近買ってきた「ソーシャルラーニング」の本。こちらは、キャスタリアメンバーの訳書。

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