「Twitterで恋人捜索依頼」の件で、朝日新聞にコメントしました


本日朝日新聞名古屋本社版夕刊の記事にコメントを掲載していただいた。新聞にコメントが掲載される場合、紙に残るがネットには出ないというパターンが多いのだが、今回は地方版のみの記事だがネットにも出るというパターンになった。紙の方は、名古屋本社版だけとのこと。

この事件の当事者である方は、すでにTwitterのアカウントを削除しているが、書き込みの内容は記事にある通りだ。

リンク: asahi.com(朝日新聞社):「恋人探して」 ツイッターの捜索願で騒動 警察は困惑 – 社会.

 「1/18正午頃より行方不明。男性。背は180センチぐらい、やせ形。長めの黒髪。眼鏡をかけてる。三重県伊勢市から四日市方面に移動。自殺するつもりのようです」

これを見た他のユーザが、真偽を警察署に問い合わせたというわけだ。

家族から本物の捜索願が出された地元の警察署には、つぶやきを見たユーザーから真偽を確かめる電話が昼夜を問わず殺到。「恋人」は無事に見つかったが、署の幹部は「業務妨害になりかねない」と、新しいネットサービスが引き起こした騒動に困惑している。

ただ、これはTwitterに限らず、ソーシャルメディア全般で起きうる現象。彼女が「何かあれば伊勢警察署へ」と問い合わせを促したことあって、電話がなりやまないという展開になったわけだが、そもそも電話以外の対応を地元警察署ができていたならば、こんなに電話が鳴ったのかどうか。

ツイッターに詳しい敬和学園大の一戸信哉准教授(情報法)はこの騒動をツイッターで眺めていた。「さまざまな現象や情報がリアルタイムで共有されると非公開捜査などに影響が出てしまうが、こうしたことを完全に回避するのは不可能だろう。ただ、共有された情報から問題が早期に解決する可能性だって十分あるは
ずだ」と話している。

今回の場合、問題解決のために善意で電話をかけた人が多いだろう。だとすれば、電話をかけたところで、警察から有効な回答は得られないという予測が可能で、かつ電話以外にコンタクトする有効な手段があれば、電話が鳴り続けるような事態は避けられたように思う。Twitter上で解決できることを、わざわざ電話で確認しようとするような人は、(今のところ)少数派であろう。たとえば、ウェブを通じて、「捜索願が出た場合、初動の段階では非公開で捜索する」ということが伝われば、最初の書き込みがRTされたのと同様に、この情報もまた伝達されていったはずだ。

当人が深刻であればあるほど、藁にもすがる思いでこうした書き込みをする可能性は高いし、それを警察がコントロールすることは難しい(非公開状態を保ちたいのであれば、このような形で呼びかけをしないよう関係者に強く依頼することが必要だろう)。どのようなタイミングでどのような情報を開示するべきか、ネットでの情報の広がりも踏まえながら、警察としても対応の仕方を考えるべき段階にあるのかもしれない。逆に初動捜査の中で、こうした人々の善意がうまく作用する場合もあるわけで、うまく付き合うことを考えるべきなのではないか。

個人的には、自分の居住地から遠いこともあり、真偽不明のこの発言を、それほどシリアスにはとらえなかった。これが自分が普段会話している新潟のユーザだったら別の判断をしたかもしれないが、たまたまRTでまわってきた三重のユーザの発言について、シリアスにとらえ、救いの手を差し伸べるすべは、思いつかなかった。自分がやりとりをしているかどうか、さらには実際に会ったことがあるかは、かなり重要な要素だ。つながりが見える範囲から来た情報ならば、かなり高い確度の呼びかけとして、とらえていたであろう。このときの善意、そのスピード、については、それなりに有効に機能する可能性はあると思う。

もちろん、今回のケースは、「クラウドソーシング」が機能する典型例ではないだろう。しかし、ひょっとしたらうまく機能するかもしれないものを、弊害があるから「けしからん」と批判するのは得策ではないように思う。「電話で業務妨害」されるという事態が発生しないよう、うまくつきあっていく方がいいというのが、僕のこの件に関する結論だ。

2 件のコメント

  • 「「Twitterで恋人捜索依頼」の件で、朝日新聞にコメントしました」について

    「「Twitterで恋人捜索依頼」の件で、朝日新聞にコメントしました」について

  • ソーシャルネットワークが上手く機能した好例だと思われる例
    ●イギリス少年の自殺告白をアメリカ少女が通報、伝言ゲームのように伝わり3時間後に救出
    http://labaq.com/archives/51187262.html
    この速度で情報伝達が可能な現場って凄いと思います..日本だとどうだろう…

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