ソーシャル・ウェブと対話するテレビ番組の可能性


4日水曜の夜、新潟デジタルメディア研究会に久々に参加した。
今回の講師はテレビ朝日クロスメディア編成専任局長の古川柳子さんで、「今、なぜクロスメディアなのか?~マスがコミュニケーションする時代の情報デザイン~」という演題でお話をうかがった。

古川さんは、東京大学大学院学際情報学府にも所属されており、テレビをめぐる環境の変化を適切にとらえつつ、テレビ業界の人々とのインタフェースを保ち、漸進的な改革を進めていらっしゃるのだろうと、お話を聞きながら感じた。

テレビ業界の人にとって、「クロスメディア」の震源地はテレビ番組にあり、そこから派生して、コンテンツの販売や、マーケティングにつなげていくという考え方にたつようだ。ネットユーザにとっても、「テレビなんてみない」という人もいるにはいるが、テレビ番組がネットユーザの話題の中でももっとも大きなウエイトを占めることは間違いない。

ただ一点違いがあるとすれば、テレビから見てネットは、テレビ番組を補完するためのチャンネルのひとつに過ぎないという点であろう。テレビ業界も、視聴者との(ほぼリアルタイムの)コミュニケーションのチャンネルをネット上に持っていることに半ば気がついているけれども、視聴者との対話にはなかなか踏み切れていない。ネットユーザから見れば、テレビは大きな震源地であるにもかかわらず、視聴者の声をネットから吸い上げ、第二波、第三波を作ることをしない、不思議な存在だ。せっかくのリソースを使いこなせない非常にもったいない存在に、僕にも見えるけれども、テレビ中心の世界観からは、また別の見え方をするのであろう。

視聴者との対話というときにも、地デジでアンケートをとるというような、番組進行の中で決められた枠組みの中での利用形態しか出てこないのは、ネットで飛び交うさまざまな声をどのように吸い上げて、打ち返すかについて、その方法を決めかねているからのようだ。それを検討する前に、ネットでの誹謗中傷を理由に挙げて、ネットとの付き合い方を考えるのを放棄するように、旧世代が誘導するのかもしれない。

たしかにテレビはもともと、ユーザとの対話の経験の乏しいメディアだ(その点ではラジオのほうが経験豊富であろう)。昨日お話を聞きながら、テレビでの視聴者との対話の事例を頭の中で探していたのだが、思い出したのは、週刊フジテレビ批評と朝まで生テレビの会場からの質問だ。前者は、自己批評番組の草分けで、今も土曜日の早朝に放送されているようだ。学生のころよく見ていた。今は電子メールで寄せられた視聴者からの声にもこたえているそうだ。このような番組は、一般の番組から切り離して、いわば「外付け」で視聴者の声にこたえるというものだが、そうではなく、番組本体が視聴者との対話をするようにはできないものか。後者、朝まで生テレビも最近見ていないが、学生時代によく見ていた頃には、会場から発言させる時間帯があった。そこではよく同世代の学生が発言し、パネラーの話とかみあわない質問とか、意味不明な質問などがよく飛び出し、ハラハラしながら見ていた。朝生での会場発言がどこまでコントロールされているのかわからないけれども、生放送で視聴者に発言させるのに比べたら、ネットからのフィードバックを適宜スクリーニングしながら吸い上げるのは難しいことではない。

このようないくつかの経験を踏まえれば、番組へのフィードバックをソーシャルウェブのうねりの中からリアルタイムで吸い上げ、それを第二波、第三波にして番組の中で返してやる手法は、そんなに難しいことのようには思えない。たぶんテレビ局の既存のビジネスモデルから見て、そのメリットをどう生かしていいか、そこが煮詰まってこないのだろう。しかし、今ならばまだ、ネット上の対話のうねりの中に、テレビは巨人として参加できるはずで、携帯コンテンツのダウンロードとか、目先の利益につなげるためのコントロールされたネットとの付き合い方よりも、このほうがおそらく、先の可能性は開けるように思う。

以下、「うねり」の一部が垣間見えるリンク。

 

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追記:このエントリへのTwitterでのコメントで、Balloo!という2ちゃんねるビューアがあることも教えてもらった。iPhone / iPod Touchのアプリだと、キー局各チャンネルの番組のスレッド書き込みが、リアルタイムで更新されるさまを見ることができる。

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