向田邦子『父の詫び状』


NHKアーカイブスで放送中。

ドラマスペシャル「父の詫び状」(90分) 1986年11月1日放送

戦前の庶民の哀感と家族のきづなを少女の視点から描いたドラマ。昭和15年、父(杉浦)の転勤で高松から東京へ引っ越してきた田向一家。恵まれない家庭に
育ちながらも、努力で出世した父は家の中では非常に厳しく、事あるごとに家族を叱咤(しった)していた。長女の恭子(長谷川)はそんな父に不満を感じる
が、父と不仲だった祖母(沢村)が亡くなった時、恭子は父の意外な素顔を知るのだった。

原作: 向田邦子脚本: ジェームス三木 演出: 深町幸男 語り: 岸本加世子

出演: 杉浦直樹/吉村実子/沢村貞子/長谷川真弓/井川比佐志/桜井センリほか

向田邦子の原作は何度か読んだ記憶があるのだが、このドラマを見るのは初めてだという気がする。向田邦子の描く父親の姿は、「寺内貫太郎」のモデルになっていたのであろう。とにかく頑固オヤジの不器用な優しさが、見事に描かれている。

このドラマの最初の放映が22年前。ドラマの設定は68年前。原作者の向田邦子が世を去ってから27年。戦中戦後を経て、ここに描かれた風景や家族は、過去の記憶となり、その人々の記憶からさえ、消えつつあるといってよい。

でもこの作品は、戦前を生きた家族の肖像、というか、風習の一つ一つ、エピソードの一つ一つ、思い出の一つ一つ、「思い」の一つ一つを、丁寧に保存しつつも、見事な娯楽作品として仕上げている。

このドラマが放映されて22年前、僕はまだ青森にいて、うちの家族も6人でにぎやかに暮らしていた。思えばその風景ですら、徐々に色あせていっている。僕は向田邦子のように、記憶を何かの形に残す力はないのだけれども、僕自身の記憶を、記憶のままにして、そのまま朽ち果てていくだけでいいのか。作品の素晴らしさに触れながら、いろいろな思いに駆られる。

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5 読みやすく、家族のありがたさが心に沁みる一冊です
4 向田家の憎めない父
5 本当に読んでほしい
4 ひどく懐かしい郷愁を感じさせられる作品
5 出色のエッセー。何も言わずまず読め!!

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