第25回文化審議会著作権分科会


本日、文化審議会著作権分科会を傍聴してきた。さっそくITMedia岡田有花記者が記事をまとめている。「Youtube=マフィア」説は、たぶん見出しになるなあとは思った。

リンク: 「私的録音録画小委員会」来期も設置 補償金問題の議論継続 – ITmedia News.

会合ではJASRAC常務理事の菅原瑞夫委員が、動画共有サイトと権利者側との協議の歴史を紹介。JASRACはYouTubeやニコニコ動画に対し、楽曲の利用許諾条件を示した上で、契約に向けて交渉していると説明した。
 

「YouTubeでは著作権侵害がはびこっていた。米国の弁護士も『先に勝手に利用して、後で交渉をするというやり方はマフィア的なビジネス』と指摘していた」と菅原常務は話し、動画投稿サイトでの著作権侵害問題を強調する。

菅原氏が何がしかの意図を持って、「マフィア的なビジネス」という発言したのかどうか、よくわからない。が、発言の趣旨としては、

 ただ「YouTubeの視聴者は多い。権利侵害しているからといって排除するだけでいいのか、という問題もあり、コンテンツホルダー側もビジネスとして、どう適法に利用するかという視点に動いている」とし、JASRACが動画投稿サイトと交渉する必要性を説明した。

ということで、7月24日の発表にあるとおり、交渉のテーブルにつく用意はあるんだということだ。ただ、実効性確保のために事業者に対して要求している内容はかなり厳しく、「アップロード作品の目視による事前チェックもしくは事前と同等のチェック」なんていう文言もある。

先日発表された、eyevioとの暫定合意については、この枠組みに乗った上でのもののようで、またYoutubeやニコニコ動画も交渉をしているようだ。そうやって交渉しながら、「やつらはマフィアだ」というのはどうかと思うが、あくまで「アメリカの弁護士」がそのように発言していたことを紹介したに過ぎないのかもしれない。

レコード協会会長の石坂敬一委員は、レコード会社が許諾した正規の音楽配信サイトを見分けるためのマーク「エルマーク」の運用を始めたことを報告。日本書籍出版協会副理事長の金原優委員はこれについて「いいことだと思う。業界団体だけでなく、政府・教育レベルで著作権に関する啓発が必要だ」と話した。

 弁護士で早稲田大学大学院法務研究科教授の道垣内正人委員は「マークが適法サイトの80%以上に付くなど、かなり普及しないと『マークがないサイ
トを違法とみなす/推定する』のは難しい。配信サイトには海外のものもある」と指摘。レコード協会専務理事の生野秀年委員は「違法ダウンロードの被害は国
内の事業者に集約されている。マークだけで100%対応するのは難しいが、普及、広報していきたい」とした。

エルマークについての上のまとめは、僕の理解とはちょっと異なる。金原氏は、「このマークに実効性があるのか?」という質問をし、さらに(おそらく実効性はないかから)啓蒙活動を政府の側でももっとやるべきだという発言をしていたと記憶している。

道河内先生の発言は、「情を知って」という基準が仮にあったとして(「ダウンロード違法化」が法制化されたとして)、その判断にエルマークの有無は影響するのかどうかという趣旨であったと思う。適法マークのついた適法サイトが全体の80%以上を占めて、つまり、ユーザから見て適法ではないサイトが非常にマイナーな存在になったところで初めて、「情を知って」いるかどうかという判断と適法マークの存在を結び付けて考えられるのではないかと。実際には、適法サイトがついてないサイトが大多数であり、それらがみな違法だといいうる状況にあるわけでもないし、海外から配信されているものに適法マークをつけられるわけでもないのだから、どうやってこのマークを違法性の判断とリンクさせるんだと。そういう趣旨であろう。

そもそもマークをつけたサイトを他のサイトと区別するということが、従来の「音楽業界」の外側から生まれる創造性を排除する意味を持っているということに、「音楽業界」の人たちは全く気がついていない。今回会議を傍聴してみて、彼らにとってそんなことはどうでもよくて、携帯からの違法ダウンロードで甚大な被害をこうむっていることをどうにかしてくれという、とにかくそこに関心が集中しているということはよくわかった。

もちろんこうした問題を、啓蒙なり教育なりで改善することはできると思うし、そのようにしていきたいと思うが、保護と利用のバランスそれ自体が、非常に複雑な制度の下でわかりにくくなっている。「他人のいやがることをしないという態度でいれな大丈夫」という、レポートを書かれてしまった経験を持つ僕としては、簡単に啓蒙とか教育で解消するなんてことはいえない。

しかしながら「適法マーク」のアプローチは、見方を変えると、既得権を持つ者たちが、自分たちの作品にマークをつけるから、それ以外の人は、創作活動なんてしないで、おとなしくお金を払って消費する側に回ってくれと、そういうメッセージのように読み取れる。「Culture First」というスローガンがむなしく響くのも、きっとそのせいだ。いや、そういう意図はひょっとしたら全く持っていないのかもしれないが、ネット社会に対しては、そのような後ろ向きなメッセージだけが伝わってくる。

そしてネット社会の側も、「リミックス文化」の実態と価値を、きちんと伝えていないのではないかという気がした。

1 個のコメント

  • [文化審議会]文化審議会著作権分科会傍聴メモ

    昨日開催されました、文化審議会著作権分科会(第25回)を傍聴してきました。 傍聴メモを作成しましたので、ここに掲載します。 なおこのメモは、私のメモと記憶に基づいてまとめたものですので、正確性は保証いたしません。その点はご留意下さい。 文化審議会著作権分科会…

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